♯8 ページ8
事故で数年分の記憶が飛んだ俺
どこかの帰り道で事故にあったらしい
同乗していたのは北山という大学で知り合った友達で、記憶がない俺に入院中も退院した後も通って時間の許す限り俺の相手をしてくれた
見た目小動物っぽく可愛い感じで、少し色素の薄い髪の毛がとても似合う
話しも合うし一緒にいて楽しくて、多分他の友達よりも一番仲良くしていたんだと思う
事故に合わせてしまった上に記憶も無くなった俺に嫌な顔もせず親身になって世話や面倒を見てくれたから、少しでも早く記憶を戻そうと俺が色々質問しても嫌な顔もせずに答えてくれたが、ある2つの質問をした時だけひろの表情が変わった
1つは事故当日、2人でどこへ行ってたのか
もう1つ、俺に彼女が居たかを聞いた時
一瞬顔が強張ったものの、”ドライブの帰り””知らない”という答え
たまに思い詰めてた表情もしていたので、何か言いたいことがあるかもという疑念もあったが、気になりつつも問い詰めることが出来ずにいた
今日の退院も付き添ってくれて、一緒にアパートまで帰ってきたからお茶でも…と伝えたがバイトがあるからとそのまま帰ってしまった
1人になり整理しながら何か記憶を呼び戻す手がかりはないかとあちこち物色していた時、クローゼットの引き出しの隅にゴムが入った開封済みの箱を見つけ、やはり彼女がいたんじゃないかという確信が生まれる
しかしひろ以外にもお見舞いに来てくれた友達にそれとなく聞いてみたが、居なかったと返ってきた
そうするとこれは何を意味するのか
みんなに黙って付き合っていた人が居たのか、それとも遊び相手が居たのか
思い出そうとすると頭痛が起き記憶を呼び戻すのを阻止される
何かとても大事な事を忘れてるのではないか…
更に何か思い出せるものはと探してると、今度は長方形の箱が綺麗にラッピングされた状態で出てきた
自分が用意したものかもしれないが、第一誰宛なのかも今となってはわからないので、ラッピングを外し中を確認すると、ペンダントヘッドがついたネックレスが入っていた
そのペンダントヘッドは「H」を形取っていた
これはプレゼントを渡す人のイニシャル…
Hのイニシャルを持つ想い人…その時ふっと顔が浮かんだ
「まさか!?」
思わず声が出てしまったが、そうだとすると色々と合点がいくつも出てきた
「だから言えなかったのか…」
俺自身もまさかと思いながらもその人しか考えられなくなっていた
300人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pearl | 作成日時:2022年12月6日 8時