【文豪ストレイドッグス】ぎゅー と ちゅー で 君と 会話【短編集】

▽.密室に揺れる ページ7

「A！」


「乱歩さ、....ぐはぁ！！」





デスクワーク中の私に抱き付いて(というかもうタックル)きた26歳児こと乱歩さん



ああ、もう暑いよ




もう既に月の上がった夜空。





体勢をなんとか立て直すと乱歩さんははぁぁ、と深い溜め息を吐いていた


「？...どうしました乱歩さん」



駄菓子でもなくなったのだろうか


そうとなればまた「買いに行け」などとコケにされそうなので抽斗の記憶を辿っていると


私に腕を絡ませたままの乱歩さんが口を開いた




「鍵閉められちゃったみたいだよ」






........




.......は？







「鍵って...あの鍵ですか？」


分かりきった事だが一応聞いてみる
すると案の定、乱歩さんは「はぁ？」と眉を歪めた



「君、鍵も知らないの？
まったく無能だねえ。鍵と言ったらあの鍵しかないでしょー？」



乱歩さんの嫌味も右から左へと消えていくので取り合えずドアに駆け寄る





ｺﾞｸﾘ。と生唾を飲むとドアノブに手をかけ、力を込めて





.........






「ま、回りません！」


「だーかーらーさー。そう言ってるでしょ！記憶力無いの君は？いや、無いか！その頭は御飾りなんだね！」


出られないの！と叫んだ乱歩さんはﾑｯと口を尖らせた






出られない


その言葉が頭の中で反響して、消えていく



取り合えずその場に正座した



力任せ？…いや、私は異能もそんな怪力も持ち合わせていない

助けを呼ぶ？…いや待て、今日私は休日出勤だった。社員や局員は愚か社長すらいない



無念






うーん、うーんと悩んでいるとふと名案を思い付いた




乱歩さんだ



天才探偵様ならこんな密室の脱出など朝飯前だろう




出来るだけハイライトを閉じ込めた瞳で乱歩さんを見ると。彼はいつも閉じられている筈の糸目をうっすら開いて微笑した






ｿﾞｸﾘ。と体が震える



一歩、一歩と歩み寄る乱歩さんに怪しい影が掛かるのが見てとれた



乱歩さんは電気を消すと私に人差し指を当てる




「よし、ちょっとしたゲームをしよう」



暗闇に包まれた執務フロア


頼りになるのは月光だけ





乱歩さんは音符を飛ばしそうな笑顔になるとドアを指差す






「今から君に誰が犯人なのか、そしてどうやって脱出するかを推理してもらう！ただし！この問題は簡単すぎるのでこの部屋を暗闇にすること。それから…」









乱歩さんは私の肩に腕を預けて、熱を含んだ声で囁いた








＿＿＿十秒ごとに、罰ゲームするから

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