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▼.無垢を穢す指先 ページ40

これが『白痴美』か。
その人を見つけて、ぼくは感動のようなものを覚えたのだ。

お人形のように伸びた手足はすらりと細く、黒々と長い髪のせいで余計細く見えた。睫毛に縁取られた丸い瞳はじっと何かを見つめているように見えて、その実きっと何も映してはいない。
小さな公園の、影のできたベンチでぼんやりと宙に視線を投げる彼女に歩み寄る。


「こんにちは、お嬢さん」


ぼんやりと宙にさ迷わせていた視線を、彼女はぼくに向ける。そこで初めて感情を持ったように、丸い瞳が更に丸くなるのを見て、ぼくは思わず笑みを深めた。


「何を見ていたのですか」
「え……あ、あの……何、も?」


多分、何も見ていませんでした。

そう答えた彼女は、少し恥ずかしそうに微笑んで見せた。
その顔の、なんと無垢なことか。


「それより、どうかしましたか?」


そう首をかしげた彼女に、ぼくは緩く首を振る。すると、彼女はきょとんとするから、ぼくは思わず笑ってしまう。

ぼくの周りに、こんなひとはいない。

そうなれば、少しだけ欲がわく。


「お名前は?」
「え、……加賀A、です」
「なるほど、A」
「……ええと、そちら様は」


おかしな言葉で問われ、苦笑を噛み殺して「フェージャです」と名乗る。


「フェージャさん、はい、覚えました」
「はい、よく覚えていてくださいね、A。
では、また明日」


この日々に彼女を求めるのは申し訳ないとは思いながら、しかし結局、ここまで落ちてきてもらえば、なんら問題はない。


「はい、……え、あれ?」


返事をして、戸惑う彼女をそれこそ純粋と言うべきか。




「こんにちは、お嬢さん」


昨日と同じ場所、同じ時間に同じ言葉でそう声をかければ、彼女はぼくを見留めて、少しだけ口許を綻ばせる。


「会えないかと思ってました」


その笑顔はきっと警戒を知らない。
私が手を伸ばせば、その頬は存外あつい。彼女は、未だ不思議そうに目を瞬かせている。

何も知らない彼女は、きっとこれからの自分のこともわかっていない。
それすら愛おしいと、ぼくは彼女の白を汚す。




2020/4/1 硝子屋

◆.指先は繋がらないまま→←▼.福音が聞こえる日



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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
- あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月25日 6時

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