▼.聖なる夜、天使の願い、或いは。 ページ35
12月24日。
クリスマスイブと呼ばれる日。街は活気に溢れ、それぞれが、それぞれの大切な人と、幸せな一夜を過ごしている。
……そんな日だと言うのに。
私は社の倉庫の整理をしている。
運んだ段ボール箱を倉庫の棚の上に置いて、思わずため息をつく。何が悲しくてこんな日に、こんな時間まで仕事をしなければいけないのだろう。
……まあ、一緒に過ごす人がいるわけでもないのだけれど。
「……はぁ……」
今日いくつ目かも分からないため息をつく。何でこうも、何でもかんでも引き受けちゃうかなー、私……。
「あ、Aさん、これで終わりです」
「あ……ありがとう、賢治くん」
賢治くんは、私が持ってきた荷物の倍以上の量を倉庫に入れて、「ふう」と息をつく。
賢治くんには、怪力の異能を頼って手伝ってもらった。きっとやりたいことがあっただろうに、快諾してくれた賢治くんはとても良い子だ。
だから、賢治くんには他意が無いと分かっている。けれど、そのため息に申し訳なくなってしまう。
「ごめんね賢治くん、手伝わせてしまって」
「大丈夫ですよ〜。
このくらい、へっちゃらです!」
賢治くんがそう言って、眩しいくらいの笑顔を浮かべるから、もう“ごめんね”とは言えなくなる。
……だから。
「ねぇ、賢治くん」
「なんでしょう?」
「……ケーキ、食べない?」
賢治くんはぱっと笑顔を浮かべて、「はい!」と顔を輝かせた。
「美味しいです〜!」
そう言ってケーキを頬張る賢治くん。
年相応の可愛らしい少年である。
近くの洋菓子屋で買った1ホール分のクリスマスケーキ。折角のクリスマス、これくらいと贅沢は許されるはずだと奮発した。
「Aさん、食べないんですか?」
「あ、食べる」
賢治くんに顔を覗き込まれて、ケーキを口に運ぶ。甘過ぎないクリームと苺の甘さが絶妙。
これは美味しい。
甘くて美味しくて、安心して。
仕事の負担とか、疲労とか、張りつめていたものが一気にほぐれて、何故だか泣きたくなる。
「……Aさん」
「え、あ、何、かな」
賢治くんに名前を呼ばれて、顔をあげる。賢治くんは優しく微笑んでいて。
「ため息ばっかじゃ幸せが逃げちゃいますから、笑ってください。僕はAさんの笑顔が好きです」
その言葉に、救われる。
(天使の願い、或いは、救いの微笑み)
2019/12/24 硝子屋
【Merry Christmas!】#2
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時