▼.向日葵に消えた ページ3
「……元気にしていたか」
墓に手を合わせ、立ち上がり、今はいない、想いを馳せる或る人へ言葉をかける。
向日葵のように笑う貴女。
夏がよく似合う貴女。
貴女の透けるような肌を、俺はまだ忘れられない。
否、どうして忘れられよう。
俺の心はきっと、まだ貴女に捕らえられているのに_______。
或る年の暑い夏のことだった。
まだ探偵社というものが確立されておらず、数学教師として勤務していた頃のことだ。
それは、一人の女子生徒だった。
長く艶やかな黒髪の、夏の海兵制服がよく似合う女子生徒。
風貌はナオミに少し似ていたように思う。
ナオミと違うのは、切り揃えられた前髪と、凛とした清楚な様だろう。
俺は、その優秀で綺麗な、それこそ白百合のような女子生徒を、確かに愛していたのだ。
「国木田先生、怒りますか」
それは、夕日色の光に満たされた二人きりの教室。
その光は彼女のつるりとした陶器のような頬を染め上げる朱を覆い隠すようにこの教室を照らす。
彼女は潤んだ瞳を伏せていた。
どんな姿をしても美人な女性は大抵泣き姿やその寸前が美しいとされることが多いが、それは確かなのだろう。
その目を見ると、くらりとした頭痛を覚えた。
それを抑えるように、何をだ、と問いかければ、彼女は震える右手で俺の服の袖口をきゅ、と握った。
「……先生、すきです」
彼女はそう言って顔を上げた。
その瞳の奥にあるその感情を見つけた瞬間、心の中に切なくもどかしい何かが渦巻いた。
ゆっくりと、右手を彼女の左頬に添える。
すると、彼女はぴくりと揺れた。
「……嫌なら、抵抗してくれ」
そうとだけ告げて、俺は彼女の桜色の唇を塞いだ。
彼女も、キスを受け止めるようにこわごわと俺を抱き締めた。
いけないことだとわかっていた。
教師と生徒の恋愛は御法度だと。
それでも確かに、俺と彼女は互いに愛し合っていた。
俺にとっても、彼女にとっても、『理想の恋人』だったのだ。
そんな彼女が死んだのは、或る熱帯夜のことだった。
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時