▼.砂糖菓子なんかじゃ物足りない ページ20
「ねえA」
「……何ですか乱歩さん」
乱歩さんがこうやって呼び掛けてくるときは、大抵お菓子買ってきて、というおねだりだ。4つも年上のくせに、どうしてこう子供っぽいんだろう。
「お菓子なら戸棚の中にまだ……」
「世界で一番甘いものって何か知ってる?」
……?
数秒ぽかんとしてしまう。てっきりお使いだと思い込んでいたから、まさか質問が来るなんて思ってなかった。
「知りませんけど……砂糖じゃないんですか?」
「はいブッブー。
ダメだねぇ、それだけの知識量で本当に探偵社なの?」
カチンとくるけど言い返せないので、そのまま「何なんですか」と問い返すと、乱歩さんは椅子から立ち上がって、此方へ歩いてくる。
「砂糖は甘味の中では大して甘くない。人工甘味料があるからだ。
スクラロースなんかは砂糖の750倍くらい甘いらしいけど、カテンフェが今のところ一番甘い。砂糖の3250倍甘い」
「……体に悪いですね」
乱歩さんはつらつらと説明を終えると、私の前に立ってにっと笑う。
「じゃ、間違えた罰ってことで、僕にとって一番甘いの頂戴」
そう言って、私の机から糖分を補給するときの飴玉を一つ取った。
……その程度の罰か、良かった。
一番甘いお菓子を探して買ってきてってごねられたのかと思った。
ほ、と息をつく。
すると乱歩さんは、何かから隠れるようにしゃがみこんで、飴玉を開けて口に放り込んだ。
「乱歩さん?
何して……ぅえっ」
ぐい、と腕を強く引かれて、椅子から滑り落ちた。突然のことに、混乱した頭では乱歩さんを見ることしかできない。
「罰って言ったでしょ。
……音、たてたら駄目だからね」
そう言って、乱歩さんの唇で口を塞がれる。強引に飴玉がねじ込まれた。
ここは探偵社で、社員さんも沢山いる。端の方の机の影とはいえ、こんなところ、誰かに見られたら。机の下で、こんなことしてるなんて。
そう思うと、顔がますます暑くなる。
「……っ」
コロコロと口の中で転がされて、しかしその飴玉はまだまだ大きい。だんだん苦しくなって、乱歩さんの胸を叩いた。
「……ん、」
「っは、……はぁ……」
できるだけ声を小さくして、肩で息を体に取り込む。顔が熱い。口の中には、まだ溶けきってない飴玉が残っている。
「ら、らんぽさん……」
「ん、まだ残ってるでしょ」
「待っ……」
まだ駄目。
乱歩さんはそう言って、私の震えた声を奪う。
それを嫌じゃないって思う、私は。
2019/9/15 硝子屋
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時