68話 ページ22
Aside
やばいやばいやばいやったやったやった。
なんてこった、まさかまさか、いくら驚いたからってよりにもよって幹部を撃退してしまうなんて。
いや、ぶっちゃけ急に襲われたのはこっちだし、正当防衛だと思っちゃいるけど、世の中正論だけではやっていけないのだ。今この場には、一介の、それも新人のメイドが国で1番偉い人間の腕を全力で捻り上げたという事実しかない。いやでも私、悪くない。
パニックを起こして支離滅裂になっていく思考に落ち着けと声をかけながら言葉を待つ。しかし、いつまでも何も聞こえてこない。
まさか、気絶でもさせてしまったかと心配になって、そろりと顔を上げる。どうやら気絶はしていなかったようで、目の前にはなかむさんがいた。ベッドの縁に腰掛けていた。いつの間にかその腕に、確かこのベッドに置かれていた大きなパンダのぬいぐるみを抱きながら、俯いていた。
「……あ、の、なかむ……さま?」
恐る恐る声をかけてみれば、ゆらりとその頭がパンダから外された。長い前髪で半分隠れていてわかりにくいが、呆然とした表情をしていて、
ぽろっ、と。
不意に水色が揺れて、その瞳から水滴が落ちた。ぽろぽろと溢れて止まらない涙に死ぬほど驚いて、ぎゃあ、と思わず悲鳴を上げた。
_______泣かせてしまった。
ごめんなさい痛かったですよねごめんなさい、と謝罪を高速詠唱する。が、効果はなかったようで、なかむさんはついに子供のように声をあげて泣き出した。
「誰も俺のこと愛してくれないんだ」なんて、メンヘラみたいな言葉を吐きながら。
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時