60話 ページ14
「……へ?」
「だって、このお城は、白くて大きくて、後ろには綺麗な湖があって、昔に絵本で見たお姫様が暮らしているお城みたいで……ずっと、大きくなったらここに来てみたいって、そう思っていたんです!」
咄嗟に思いついた嘘話だったが、きりやんさんは「本当に……?」と嬉しそうな声を上げる。
「この城、実は俺が作ったんだ」
「…………えっ!?きりやん様が!?」
本気で驚いて、思わず声が出る。素だった。
「正確に言うと、皆で考えて、デザインして、いろんな人に手伝ってもらって、だけど」
「すごい。じゃあ、きりやん様はこのお城の生みの親、つまり、お母さんなんですね!」
「いや、そこはせめてお父さんであってよ!」
もっともなツッコミは、どことなく育ての人たちを思い出させて、懐かしさも相まって笑ってしまう。自国を出てきたのは1週間ほど前なのに、既に懐かしかった。
「この場所を作った方にお会いできるなんて、光栄です。素敵なお城を、私の夢を作ってくれて、ありがとうございます」
話の流れ的にそう言えば、そっか、夢か、と呟く。そして、
「……きりやん様?」
ぽろり、と。不意に真の瞳から水滴が落ちた。
……え"、まって、私また何かやった!?
「ど、どうなされたのですか?どこか痛いのですか?それとも私の話し方が上手すぎて感動したのですか?」
「いや、違、くて。てか、ふふっ、なんで後半ポジティブなの。面白いね、君」
泣き笑いのように、口元で笑んで言葉を紡ぐ。
「そうじゃなくて。……俺、こうなってから____目が見えなくなってから、色んな人に迷惑ばっかかけてきててさ。あいつらにも、使用人にも、国民にも……。この前だって、まだまだ未来がある女の子のこと、お金でここに縛りつけてた。俺は、人の夢とか、未来とか、ぜんぶ潰しちゃうかもしれないお荷物で。……でも、こんな俺でも、誰かの夢を作れてたのかなって、そう思ったら」
嬉しくて、と。
そう言うきりやんさんに、私は罪悪感で押し潰されそうになる。
この人は____多分、相当に自分のことを責めている。何も悪くないのに。それこそ、小娘1人の嘘話でぼろぼろ泣いてしまうくらい。
____ごめんなさい、と心の中で謝りながら、そっと彼の手を握る。
「ありがとうございます。_______私の夢を作って、そして、叶えさせてくれて」
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時