58話 ページ12
極東の国でよく見られる装飾が施された木製の扉の先は、午前中であるにも関わらず、極限まで薄暗かった。
全ての窓に分厚いカーテンがかかっていて、照明は天井から垂れ下がったオレンジ色の光を放つランタンと、床にいくつか置かれた花の形のライトだけだった。フィーさんが入り口の扉を閉めたので、さらに室内は暗くなる。
突然の暗闇に目が慣れない私と違い、慣れているのかフィーさんは「おはようございま〜す」と美しい声で挨拶し、つかつかと部屋の奥へ向かう。
慌ててその後を、何かにぶつからないように慎重に追えば、フィーさんは多分ベッドと思われるものの横に立っていた。そこにいる人に声をかけながら、ゆっくり身体を起こす。
「おはよ、フィーさん」
「はい、おはようございますきりやん様!今日はですね〜、なんと新人さんが来てるんですよ〜!ほら、ご挨拶!」
ちょいちょいと手招きをされ、ゆっくり近づく。途端、床に置いてあった何かに躓いて、盛大に転んだ。大きな音が部屋に響いた。
「うわっ、何!?どうしたの!?」
「あー、ちょっと新人さん、緊張のあまり転んじゃったみたいです〜。ごめんなさい、少し手を貸してきますね?離しますよ〜」
そう言って、「大丈夫〜?」とフィーさんが心配そうに私を覗き込む。顔面を思い切りぶつけたが、親指を立てるとグッと同じ仕草を返された。
「どうやら大丈夫みたいです〜。さ、Aちゃん」
フィーさんに手を引かれ、暗闇に目が慣れてきて、私はそこで初めてきりやんさんを目視した。
彼は、ふわふわした金髪の男性で、綺麗な金色の目を持っていた。しかし、金色は長い間磨かれていなかった鏡のようにどこか曇っていて、視線は私から少しだけずれていた。
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時