75話 ページ29
確か、と記憶を辿っていると、その子が焦った様子で前に出てきた。そして、手を大きく振りかぶる。
「_______煩いわね、いいかげん罪を認めなさい!この、売女!!」
_______あ、叩かれる。
これは避けていいかな、と思って後ろに下がろうとして、ドン!と何か、壁のようなものにぶつかった。
え、こんなところに壁あった?と振り返れば、目に入ったのは赤色。……いや、赤い服だなこれ。視線をずらせば、そこには顔があった。ふわふわした赤茶の髪があって、薄いブルーの瞳が面白そうに私を見下ろしていた。
誰だ、と反射的に思って、私を叩こうとしていた子の手が止まる。「ぶ、ぶるーく様!」と焦ったように言って、彼女が手をさっとおろして後ろに隠した。
ぶるーく様?
聞き覚えがあるような、ないような。誰だっけ、と記憶を辿って、思い出したのは金髪美少女____リリーちゃんの顔。
……そうだ、確かあの子がぶるーく様とやらの担当をしていたはずだ。なるほど、この人のことか____え?ってことはこの人、もしかして、
私が結論づける前に、ぐいっと水色リボンの彼女が私を押しのけ彼の前に立った。
「あ、あのぶるーく様、おはようございます!えっとその、昨日は……まるで、夢のような時間で、」と顔を赤らめる。
その表情に、あ、そういえば私昨日迷子になって一回事故ったな、と思い出して、ってことはまさか昨日あそこで見たのこの2人!?と思ってぶるーくさん(仮)の顔を改めて見て、
「_______危ない!!!!」
叫んで、私を押しのけた水色リボンの子の襟を掴んで全力で後ろに引っ張った。投げた、の方が近いかもしれない。「キャッ!?」と悲鳴を上げて床に倒れ込んだ彼女が「ちょっと!」と私を睨みつけて、そして、そのままそれを目にする。
今しがた彼のベルトから抜き払われ振るわれた、大ぶりな剣。鞘はなく、抜き身だった。ギラリと光る鋭い切先は、人間の肌など簡単に切り裂くだろう。
「……ぇ」
あのままだと自分の首がどうなっていたか察したのか、腰が抜けたように座り込む彼女に、ゆっくりと、笑みさえ浮かべながらぶるーくさんが近づいていく。
______まずい。本気だ。
「あぁもう次から次へと_______!!」
床を蹴って、水色リボンの彼女の膝と背を支え、いわゆる"お姫様だっこ"のように抱き抱える。幸いにも、呆然としているからか暴れ出したりはしなかった。
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時