71話 ページ25
Aside
子供のように泣きじゃくる大の大人を見て、初めこそ混乱したが段々と冷静さが戻ってきた。泣きながら時折漏れる言葉に耳を傾ければ、どうやら私がやったことが痛くて泣いたとか、キレて逆に泣いたとか、そういうことではないらしい。
要約すると、『私に嫌われた』と泣いているらしかった。正直驚いた。だって、
「私のことが嫌いなのはなかむ様の方じゃじゃなかったんですか……?」
「……ぇ……?」
「いやだって……さっきまで、殺そうとしてたじゃないですか、私のこと」
標的を全然別の行動で安心させ、抵抗できないように拘束してから殺す。暗殺なんかでは常套手段だ。
おそらくさっきのは、私の首を絞めようとしたのだろう。この国では処刑は幹部自らの手によって行われるのかと、あの時初めて知った。
そりゃあフィーさんが心配そうな顔をするわけだ。天井のシミを数えてればそのうち、なんて言葉、普通に考えたら中々サイコだけど、この城ではそれが日常茶飯事なのだろう。
まさか数日前に踏んだ地雷がそこまで致命傷だったとは知らなかった。デッドエンドは嫌だから、今から誠心誠意謝ればどうにかなるか、とか、最悪力で押し切って、とか色々考えていたのに……私に嫌われたと思ったから泣いている?意味がわからない。
そう思って口にすると、彼はぽかんとした顔から一転、ぶんぶんと首を振って「殺そうなんてしてないよ!!」と焦ったように言った。
「え、でも押し倒してきたじゃないですか。首を狙ったんでしょう?」
「狙ってない!なんでそんな話になってるの!?」
「あ、もしかして首じゃなくて心臓とかの方でしたか?ナイフっぽいものは見受けられなかったのですが、だとしたら中々やりますね」
「それも違う!あれは……!」
そこまで言って、彼はふと顔を赤らめて目を逸らした。なんでもない、と言った。
「え、なんですか気になるのですが」
「なんでもないってば!……やっぱり君、変な子」
「喧嘩売ってます?言い値で買いますよ?」
「褒め言葉だよ。っていうか、口調砕けすぎじゃない?俺のことなんだと思ってるの……」
「自分を殺そうとしてきた相手には、そりゃあこうなりますって。下手に下手に出て同じようになっても怖いですし、命は惜しいし_____あと、なかむ様のことは普通に人間だと思ってますよ」
逆にそれ以外なんだと思うことがあるんだろうか。実はパンダの化身とか、そういうこと?
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時