ほくとの童話〜人魚姫２〜

８９　浜辺　大我side ページ42

「えっ？！…大我…結婚するの！？」

「俺はこの国を治める王の跡継ぎだから…結婚するのは義務なんだよ。俺の次の後継者も作らなければならないし…」

「大我！ダメ！結婚しちゃダメー！！」

慎太郎が俺に飛びつくように大きな声でそう言ってきた。

「し、慎太郎…？なに、急に…」

「大我は北斗が好きなんだろ？！愛してるんだよね？それなのに…他の人と結婚できるの？」

慎太郎…そんな純粋で真っ直ぐな瞳で…見ないで欲しい。

「慎太郎…俺だって他の姫となんか結婚したくないよ。でも、俺が愛した人魚姫は海に帰ってしまった。もう二度と会えない。
だけど北斗を愛してる気持ちは一生変わらないから…俺は、俺の心は北斗に捧げようと思ってる」

「だったら…！結婚なんかしないで…！」

「慎太郎、それは難しいんだ…。
俺の心は北斗のものだよ。だけど心が無くなった空っぽの俺は…義務を果たすためだけに、結婚しなければならないんだ…」

自分でそう話していて、悲しくなってしまった。

俺の心を奪い、海深くに連れていってしまった人魚姫。


今の俺は空っぽだよ…北斗。


「ダメだよ…そんなの。大我は…北斗が好きなのに、愛してるのにそんなこと…」

「慎太郎、北斗が元気になるまで俺は何度でも、いくらでもイチゴを持ってくるよ。他にも必要なものがあれば言って欲しい。北斗のためなら…なんでもするから！」

二度と会えなくても、君が元気であれば…それでいい。

「北斗も大我も…ダメだ…！お互いに…こんなに好きなんじゃん！もう！こんなの…見てられない…！」

「…慎太郎？」

慎太郎が急に声を荒げた。

「大我！結婚しないで！絶対に、ぜーったいに結婚しないで…！」

「な、何を急に…」

「俺が…北斗を連れてくる…！だから待ってて…！俺を信じて！」

「えっ…えっと、慎太郎？」

待って…慎太郎、今、なんで言った…？

「だから！大我は結婚しないで！俺のこと信じて待ってて！返事は！？」

「う、うん…わ、分かった…」

慎太郎の迫力に押されて思わず「うん」と頷いてしまったけど…。

今、慎太郎…北斗を連れてくるって言ってなかった…？！

まさか…ねぇ…本当に…？！

慎太郎は呆然としてる俺の手を強く握りしめ、また７日後に来るから！とだけ言い残して慌ただしく海に帰って行った。

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