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9.誰か来た ページ9

ボトリと鬼の頸が地面に落ちた音がした。

勝った。十二鬼月に勝てた。
父さんが助けてくれた。

たった今なし得た出来事に炭治郎は喜びで一杯になる。


代々家に伝わっていた神楽で何故技を出せたのかは分からない。

でもそれで助かった…勝てた。
勝てたよ禰豆子。

肩で息をして力を振り絞る。

折れた刀を手にすると、疲弊しきった体をずるずる引きずって地面を這った。


視界が狭まっていて見えずらい。
呼吸を乱発し過ぎたせいか?

考えていると、キイィィィンと酷い耳鳴りがする。

体中に激痛が走っていた。

それでも頭に過るのは猪の被り物を被った仲間の姿だった。

早く回復しなければ、俺はまだ戦わなければならない。
伊之助を助けに行くんだ。早く。


ずるずると前へ体を進めて、禰豆子を探す。

その時、背中に異変を感じてぞわっと体が震えた。


血の匂いが濃くなった。

まさか。と、頭をよぎる。


まだ生きている?
頸を切ったのに?

そう言えば、鬼が消えていくときの灰のような匂いがしない。


「僕に勝ったと思ったの?可哀想に哀れな妄想して幸せだった?」

鬼が何かを言っている。


まずい。と身体が警告を鳴らしている。


「僕は自分の糸で頸を切ったんだよ。お前に切られるより先に」


立て!早く立て!!
呼吸を整えろ!急げ早く!


「妹の力なのか知らないが、苛々させてくれてありがとう。何の未練もなくお前たちを刻めるよ」


正しい呼吸ならどんなに疲弊していても関係ない!
急げ!急げ!

そう思うのに、思い通りにいかない。


「血鬼術 殺目籠」


自分を囲うように円形に編まれた籠のような糸が張られた。


焦るな!息を乱すな!
落ち着け!落ち着け!!

言い聞かせるけれど、糸の籠は小さくなって迫ってくる。

どれだけ力を込めようとしても、腕がピクリとも動かない。


腕が上がらない。

その事実に目の前が絶望に染まる。

終わった…と思ったとき、風を切って何かが飛び込んできた。


体を囲んでいた糸が切られてバラける。


誰か来た…
誰だ…?善逸か…?

もう一人の金髪頭の仲間の姿を思い浮かべたけれど、そこに立っていたのは別の見知った人物の背中だった。


「俺が来るまでよく堪えた。後は任せろ」


あれは………と思いっていると、背中から月明かりに照らされて影が射す。


「じゃあ、後は頼みましたよ」

女の人だ。


「君、大丈夫ですか?」

そう言って長い髪を一束垂れ下げて、俺を覗き込んだ彼女が笑いかけてきた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇 , 不死川実弥   
作品ジャンル:アニメ
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月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時

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