1.噂の女神 ページ1
月明かりの下、長い黒髪を一束に纏めた彼女は太い木の枝に座り込んでいた。
「今夜は月がきれいよ、A」
誰に向かって言うでもなく、独り言のように呟かれたそれは静かな森の中に溶けていく。
そこへバサッと羽を羽ばたかせて戻ってきた鴉を見付けて立ち上がると、大きな木の枝から枝へと身軽に素早く飛び移って風のように駆け抜ける。
「うわぁ!来るな!来るな!来るな!!!」
刀をにブンブン振り回している隊員の前に“それ”がいるのを見付けて、懐に収まっている刀の柄に触れる。
スッと流れるように刀を振れば、鬼の頸が宙を舞ってぼとっと地面に落ちた。
焦げ臭い匂いがして「ぎやぁぁぁぁ…」と鬼の叫び声が響く。
スタッと地面に着々した彼女は尻餅をついて腰を抜かしている隊員に手を差し伸べた。
「お兄さん、お怪我は?」
「だ、大丈夫です……」
ポカンと口をあけてあんぐりしている彼ににこっと笑いかける。
「それは良かったです。次は鬼に勝てるように鍛練、頑張って下さい」
淡い青と水色の市松模様の羽織を翻した。
助けられた隊員は、はっとして美しいその後ろ姿に声を張り上げる。
「あのっ!貴女はもしかして…!噂の“女神”さんですか!?……水の呼吸の使い手の…っ!?」
それを聞いて、「女神だなんて大袈裟よ」とクスッと笑う。
ひらりと右手を上げて、振り返ることなく彼女はその場を去っていった。
いつの間にか鬼の体も焦げ臭い匂いも消えていた。
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月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時