2.隠の任務 ページ2
夕方、西日の光で目が覚めた私は重たい体を起こす。
「いたたたっ…」
またどこかやっちゃったかな?
起きて一通り体を確認する。
特に異常は見当たらないので、筋肉痛のようだ。
ふわぁっと欠伸をしてから長い黒髪をといて、一束に結い上げたそれを丸め込むと簪で留める。
仕事着に着替えて「隠」の文字を背負うと私は部屋を出た。
*****
「A!オハヨウ!」
バサッと翼をはためかせて肩に舞い降りる鴉。
「おはよう、花!」
「琴音カラノ文ヨ」
その言葉に腕を差し出してやれば、そこに止まるので花の足にくくりつけられた文を外す。
「今日の予定は?」
「今日ハ呼ビ出シガアレバ任務ヨ!」
「そう、ありがとう」
「早速、任務ガ入ッテル」
「じゃあ、案内して」
私の相棒、花に案内されるまま暗くなった道を急いでいると、同じ隠の先輩を見つけた。
「後藤さーん!」
後ろから声を掛けると、少し目を見開いた後藤さんが振り返った。
「おぉ、A。お前今日はいいのか」
「はい。目覚めはばっちりです!」
得意気に笑ってグッと親指を立てる。
「そうか。良かったな」
はははっと少し無愛想に笑う後藤さん。
私は目の前の大きな山を見る。
「これ、那田蜘蛛山に向かってますよね」
「まだ戦闘中らしいけどな」
「不気味ですね」
「鬼がいるからなー」
暫くして山の麓にやってきた。
まだ戦闘中の為、何処から鬼が出てくるか分からない。
ここからは注意して中へ足を踏み入れる。
無気味な気配がするので、気を紛らわせるために私はまた後藤さんに話しかけた。
「私、夜の那田蜘蛛山ってあんまり好きじゃないんですよね」
「何でだ?」
「ほら、暗くて見えない上に蜘蛛が苦手なので」
言えば後藤さんが残念そうな声を出す。
「あー…」
「どうしました?」
「いるぞ」
「へ?」
「蜘蛛」
地面を指差す後藤さん。
下を見れば一匹、地面を這いずっていた。
「ひっ!」と悲鳴を上げてそれをげしげしと踏みつける。
「そこら中、蜘蛛の巣だらけだ」なんて呟く先輩に背筋がゾッとするのを堪える。
「Aまだいけそうか?」
気遣うその言葉に明るく振る舞う。
「い、一匹ぐらいなら大丈夫です!」
「じゃあお前、帰れ」
「え?」
「うじゃうじゃいるぞ」
後藤さんの視線を辿れば前方から無数の蜘蛛の姿が目に入った。
「あぁ…」
其処からはよく覚えていない。
ただ後藤さんが「Aーーー!!」と私の名前を呼ぶ声がしていた。
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月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時