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与謝野先生の去って行った医務室は静けさに支配され、休憩、と云われても何だか居心地の悪さを感じていた。他の人はもう仕事を頑張っているのに、私なんかが休憩何て。私の異能力は大して役に立たないから、体力と事務仕事の速さだけが売りなのにな。
『アンタはもうちっと自尊心があっても良いのにさ』
先刻の、与謝野先生の言葉が、自分の中で反芻する。
自尊心。自分を尊ぶ心。自分に対して肯定的である心理。
十分にあると思っていた。私は自分を認めているところはあるし、別に自分が嫌いというわけでもない。好きになりきれない、という方が正しいかもしれないが。
其れなのに、与謝野先生は如何してあんな事を言ったのだろう。与謝野先生のいう自尊心って何なんだろう。
正解のない問がくるくると脳髄を廻っていく。…今度ちゃんと其の真意を聞かなきゃ、…
そう独りごちていると、こんこん、と扉をノックする音が聞こえた。
「はい」
「私だ。入るよ」
がちゃりと鈍い音を立てて扉が開く。其処には、すらりとした長身で、砂色の該当を纏い、鷲色瞳と蓬髪を携えた太宰さんが、顔に「不機嫌」を張り付けて立っていた。
「太宰さん、―――不機嫌の張り紙してるみたいですよ」
何とか此の空気をましなものにしようと、変な冗談を出まかせで云って仕舞ったが、結局何も変わりやしないまま。寧ろ、余計に太宰さんの不機嫌を助長させて仕舞ったようだった。
「またかい?」
「またって、…」
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蓮ノ花 - 江羅古九さん、感想ありがとうございます!^_^はい、絵は自分で描きました!女の子の描き方ーみたいな本読みまくって描いた成果が出てたら良いんですけど笑笑 (2019年5月4日 21時) (レス) id: d96b011022 (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 文章の感じもそうですけど、絵が凄く上手いですね!!ご自分で書かれているんですか!? (2019年5月4日 21時) (レス) id: 651ad92b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮ノ花 | 作成日時:2019年4月14日 2時