第四十四話 畑で虎を捕まえて ページ50
雪駄を履き、上巳は畑に降り立った。視界に映るのは、半分程耕された土……もとい、これから畑になる予定地である。
脳裏を、走馬灯の如く駆け抜けたのは、審神者候補生がほうりこまれる学校で過ごした日々に、審神者に必要な座学に実技の授業。霊的な話から、農業高校もかくやと言った第一次産業に関する話までと実に幅広い内容だった。
今更ながら、畑について学んだ意義を理解し心にじーんと響く。
そして、五虎退の姿を探す。逐次休憩を取っている筈とはいえ、人間の身体を得て日は浅い。それなりに、疲労が溜まっているのではと考察する。
その時だった。灰色の模様が入った白い猫(？)がこちらに向かって駆けてくる。
「と、虎さん！ ま、待ってぇええ！！」
上巳は、五虎退の悲鳴を受けて、咄嗟に白い猫……否、仔虎を受け止めた。
(……ん？ 虎？？ …えっ！？)
無表情かつ無言のままパニックになり立ち尽くした上巳。
上巳が仔虎を抱えている姿を視界に入れ、五虎退はこちらに走って来た。
「あ、主様！ 虎さんを捕まえてくれて、ありがとうございます」
ぺこり、と頭を下げはにかむ五虎退を見て、上巳は癒された。刹那、自分の抱えている存在を忘れは……しなかった。いささかぎこちない動きで五虎退に引き渡す。
「……アッ、どうぞ」
仔虎を受け止った五虎退は、首を傾げた。
「……それにしても、主様どうしたんですか？ばみ兄は出陣しましたよ？？」
取り敢えずの危機が去ったせいか、上巳はいつもの調子を取り戻す。
「ああ、それは存じています。……五虎退様を一人で放っておくわけにはいかないなと、今更ながら気づきまして」
そう、苦笑を浮かべて、上巳は金平糖の入った小瓶を見せた。
「取り敢えず、一旦休憩しませんか？……あ、手洗いはしっかりやりましょうね？」
五虎退は目を見張ったが、こくりと頷いた。そして、言われた通り手を洗った。
戻って来た五虎退に対し、上巳は縁側に来るよう手招きをした。おずおずとやって来た五虎退に、白湯の入った湯呑みと金平糖を渡す。
「知っていますか？ 疲れた時は甘いものが一番なんですよ」
「そうなんですか？ ……じゃあ、出陣から帰って来た皆さんにも甘いもの、ですか？」
五虎退は、ぱくりと金平糖を頬張る。そして、表情を蕩けさせた。
「そうですねぇ。昼餉の後に、おやつの時間の導入もいいかもしれませんね」
上巳はにっこりと笑った。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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清河清明(プロフ) - 鞠璃音さん» コメントありがとうございます！！これからも頑張ります！！ (2016年10月23日 23時) (
レス) id: 4a48ec0504 (このIDを非表示/違反報告)
鞠璃音 - 友人に薦められて読みました！主人公の行動が斜め上で、面白いです。これからも更新頑張って下さい！！ (2016年10月23日 23時) (レス) id: 1bb56d4b39 (このIDを非表示/違反報告)
清河清明(プロフ) - ゆめゆさん» ご指摘ありがとうございます！きっちり修正しました。コメントありがとうございました！！ (2016年10月15日 15時) (レス) id: 4a48ec0504 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめゆ(プロフ) - 隊の名前が間違ってますよ！魚鱗陣に有利なのは逆行陣ですよ！ (2016年10月15日 15時) (レス) id: 31a1160be4 (このIDを非表示/違反報告)
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