第三十七話 水場の変 其の弐 ページ42
厨に着くと、上巳は襷で着物の袖をたくし上げた。
「……して主よ。俺は何をすれば良いのだ？」
三日月宗近の問いに、上巳は暫し沈黙した。勢いでうっかり了承したものの、相手は神である。
(これ、本っ当に手伝わせていいんだろうか……)
上巳の様子を察したのか、小狐丸は口を挟んだ。
「主様。遠慮無くこき使って構いませんから！」
「うむ、給料分の仕事はしよう」
給料分の仕事という所帯染みた言葉を、末席とはいえ神の口から聞きたくなかった。
昨日の今日で、刀剣男士に抱いていていたアレやソレが見事に砕け散っていく。
しかし、その言葉で逆に吹っ切れたのだろうか。上巳は、ニッコリと微笑んだ。
「そうですね。……三日月宗近様は、そこら辺掃除してて下さい。はい、これ雑巾。」
そして、白濁した液体の入ったバケツを渡した。
「……何だ、これは？」
「米ぬかです。米ぬかは、雑巾に染み込ませて磨くと床がぴかぴさになるんです」
「あいわかった」
三日月宗近はこっくりと頷くと、床磨きに勤しみ出した。
それを、半ば呆然とした顔で見ているのは小狐丸である。
(よりにもよって……あの、……あの三日月に床磨きをさせるとは……)
仮にも三日月宗近は、天下五剣の一振りである。
「……丸様。……小狐丸様」
己の名を呼ぶ主の声に、小狐丸はハッとした。
「はっ…はい、なんでしょうか？」
「小狐丸様は、こちらをお願い出来ますか？」
そう言って、上巳は包丁とキャベツを差し出した。
「……これは、」
「付け合わせのキャベツです。千切りにして下さい」
ーーーー
ーーー
ーー
小狐丸と、三日月宗近が厨の手伝いから解放されたのは八時前のことだった。
他の刀剣達が、集まりだしたのより少し前のことである。
小狐丸は、遠い目をして主にビシバシ指導されながら手伝った朝餉作りを思い出す。挙動のおっとりとした三日月宗近は、早々に戦力外通告をされていた。
結果、小狐丸が大半を手伝うことになった。
やれ千切りが甘い、鍋かき回せ、大根の葉を捨てるな、灰汁捨てろーー容赦無く飛んでくる厳しいダメ出しに、かつて難民を大量に製造した三条のレア刀は、一言も反論出来なかった。
今世の主様は、完璧主義者であり、例え素人であっても容赦の無い方だった。
「皆様おはようございます！ 今日は、ご飯と豚の生姜焼きにキャベツの付け合わせ。大根のお味噌汁です！！」
主の声が大広間に響いた。
第三十八話 手伝い談義に花咲かせ→←第三十六話 三条の疑問 後
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清河清明(プロフ) - 鞠璃音さん» コメントありがとうございます！！これからも頑張ります！！ (2016年10月23日 23時) (
レス) id: 4a48ec0504 (このIDを非表示/違反報告)
鞠璃音 - 友人に薦められて読みました！主人公の行動が斜め上で、面白いです。これからも更新頑張って下さい！！ (2016年10月23日 23時) (レス) id: 1bb56d4b39 (このIDを非表示/違反報告)
清河清明(プロフ) - ゆめゆさん» ご指摘ありがとうございます！きっちり修正しました。コメントありがとうございました！！ (2016年10月15日 15時) (レス) id: 4a48ec0504 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめゆ(プロフ) - 隊の名前が間違ってますよ！魚鱗陣に有利なのは逆行陣ですよ！ (2016年10月15日 15時) (レス) id: 31a1160be4 (このIDを非表示/違反報告)
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