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.『質問に答えろ』
「彼女含めて１１３人」
『は...！？』
おれが驚いていると、男がそこに口をはさんだ。
「そして全員、ジサツ志望者だ。死という救済を、彼らは望んでいた」
驚きの他に、惑いなど複雑ななにかが絡まって、おれは言葉を発せずにただたたずむ。
「どう思う？びっくりした？そしてね。悪いのは全部、お前たち社会のせいだよ。自覚持ってね」
優しい口調に、刺ある言葉を、やはりおれは、なんとも言えない気持ちで聴いていた。ジサツ。死にたいと願うことに罪はあるのだろうか。そしてそんな彼らの願いを叶えることとは、罪であるのだろうか。
考えれば考えるほど、脳内は混沌として、収拾がつかなくなる。
「他になにかある？」
その男の声のあとには、重い沈黙がしばらくおりていた。お互いに、なにも言葉を発さなかった。おれは、覚悟を決める。
『...詠見は、連れて行かないで、ください。お願い、します』
そのときおれは、地面と向き合う状態にいた。土下座だった。声が、震える。
『お願いします』
「うーん、それは、どうして？」
『それは、って、えっと...』
気恥ずかしいのかなぜなのか、咽喉で言葉が絡まって、どぎまぎしてしまった。
「うん。わがまま、でしょ？」
『は...？』
「わがまま。なんだよ。彼女が死を懇願している。君は、それを無視するんだ。生きることを、強制するんだ。ねぇ。そんなに残酷なことって、他にある？」
物事の、核心を突いていた。まさに、そのとおりだった。それでも、なんだか熱いものがせせりあがってきて、おれはそのいきおいのままに、口を開く。
『そうだ、わがままだ。わがままでしかない。でも、おれは、あいつにまだ、伝えられていないんだ。あのまま、死んでほしくない。だって...』
そこで息を吸う。浅く、それでいてたくさんの空気を取り込むように、胸を満たす。
『好き...なんだ。おれ自身も、よくわからないけど、好きなんだよ』
さっき吸った息を吐くようにして言葉を紡ぎ、それを言語化した。ずっと、目をそらしていた気持ち。あいつが、好き。
ずっと無表情なのに、たまに笑ったり驚いたりするところが、好き。授業のときに、空ばかりを見つめているところが、好き。頭はいいのに、人の心のプライベートなところまで踏みこんでこないところが、好き。言えば、絶えない。全部合わせて、大好き。いや、それよりももっと。
それは、愛をも超越する。
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うずのしゅげ(プロフ) - 夕さん» こちらこそありがとうございます😭😭 こんなに昔の作品を見てくださる方がいるだなんて😭😭😭 世界観にも文章にも美しさを大切にして書いているのでそう言ってもらえて本当に嬉しいです！ (9月23日 22時) (
レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
夕 - 美しい世界観と文章に惹き込まれました。素敵な作品をありがとうございました！ (9月21日 19時) (レス) @page39 id: 420ebc061f (このIDを非表示/違反報告)
片陵 朔(プロフ) - 琥珀さんさん» ありがとうございます！うれしいです。またぜひ読みに来てください。 (2022年6月25日 19時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀さん - おもしろかったです！ (2022年6月25日 17時) (レス) id: d4c8f7af2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うずのしゅげ | 作者ホームページ：https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7
作成日時：2022年4月24日 11時
