相対する世界に飛び込んだようだ。 (ページ14)

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「あ、そうそう。A、名前考えといてね」
「名前、ですか？」

夕食の席で思い出したように言ったミスターに聞き返した。なぜ名前を考える必要があるのか。考えられる理由としては正体がバレないようにするためだが……

「関わってきた人達の記憶は消した。けど、万が一って場合があるからね」
「予防線っちゅーことやな」
「なるほど」

ひとつ頷き、顎に手を添えて考えた。今じゃなくていいよ、とミスターは言ってくれているがこういうことは早いうちに決めた方が良い。んー、と悩んでいた時、突然パッと思いついた。

「ユオンってどうですか？」

皆に問えば「いいね！」「素敵ですわ」「ピッタリだ」と好感触だった。ミスターに視線を向ければ、頷いた。

「じゃ、これからはユオンということでよろしくね」
「はい！皆、改めてよろしくね」

そう言えば、にこやかに返してくれた。ふふっと笑い、温くなったスープを飲んでいるとスキャターが口を開いた。

「そういえばミスター。ユオンちゃんの衣装、どうするおつもりですか？」
「あ」
「まさか、忘れてたんですか！？」
「そんな、まさか！……ただ記憶の隅に言ってただけだし」
「それを忘れてたって言うんですよ！」

もー、と呆れるスキャターに、そんなに言わなくてもいいのにと若干いじけたミスター。この師弟はこのコントっぽい感じが通常運転なのだろうか。
食後のデザート＿＿＿今日はかぼちゃプリン＿＿＿の美味しさに心を奪われながら彼らの話の内容を整理すると、どうやら私の衣装を作ってくれるという人達とミスターが犬猿の仲らしく頼むの嫌だなぁということらしい。うん、ミスター。そこは我慢してください。

「まあ、仕方ないか……」

はあ、とため息をついたミスターだったが「あ、」と何か思い出したらしい。

「明日のリクルーティング、彼らじゃないか。どうせここに来るだろうし、その時でいいか」
「そういえばそうでしたね。ちゃんと同席してくださいよ？」
「わかってるよ。スキャター、お前言うようになったね……」

しみじみしているミスターとすっとぼけるスキャターを見て吹き出したのはご愛嬌。