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何が何だか分からなかった。
身体が小さくなった途端、心の制御が効かなくなった。
次から次へドロドロと。溜めに溜めて、そして堰き止めてきた黒いナニカが流れていく。
嵐のせいで決壊したダムのように。
「嘘ッ…!嘘つき……」
分からない。分からない。
口から吐き出される言葉は際限なく、止まることを知らない。
いつもなら全て吞み込めるのに。紡がれることなんてないのに。
自分でも自分が止められない。制御の仕方が分からない。
「"アノ子"の方が良いくせにッ…!」
御免。御免なさい。
でも止まらないの、御免なさい。
握り拳を振り上げて、勢いよく振り下ろす。
それも振り下ろす先は_____受け止めてくれている、彼の胸板。
容赦なく、力いっぱい叩いてしまっているのに。彼は何も云わない。
それどころか、私を膝上に乗せて、見かけによらず力強い両腕で抱き寄せて。
黙ったまま、苦しそうな笑みで私を見下ろしていた。
普通なら突き飛ばして床に落とすくらいしても、可笑しくはないのに。
「___"要らない子"だっけ。あ、はは……そうだった」
駄目だ、可笑しいや。
あんなに止まらなかった言葉が、今度は謎の嗤いに変わる。
いつの日か枯れてしまった筈の涙も、嗤いと同時に込み上げてきた。
「う、ふふ……ふはッ、は」
「Aさん?どうしたんです……?」
「?どうしたんじゃ」
「Aさんの様子が……急に笑い出して」
あは、やっぱり私は可笑しいらしい。
だろうね。不気味なくらいに嗤っているのに、痛くて痛くて仕方がないもの。
次々と甦る記憶に、心の奥底がズキズキ痛む。
「ッ!?Aさんッ?」
あの苦笑から一転。焦りの表情へと変わった条野さん。
私はどうもしないのに。何か思うところでもあったのかな。
彼の右手が私の左頬を包み、親指で目尻を拭う。
「あは、そーだ。全部無駄なんだった」
忘れてた、と続けようとした口を塞がれた。
ぴとりと唇に押し付けられる細く長い指が、言葉を紡ぐことを許さなかった。
正直、感謝した。
制御不可能だった口を止めてくれたのだから。
これ以上の失態を防ぐことが出来たのは有難い。
でも、邪魔だとも思ってしまった。
真っ黒の私にとって、心に溜まる膿を吐き出せる絶好の機会だと思ったらしい。
顔を逸らし、彼の手から逃れようとしてみる。また塞がれない様に。
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時