【文スト】幸せ恐怖症《条野採菊》

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条野 side.





巡回で偶然通りかかった所を警官に泣きつかれて、軍警の緻密な捜査網から見事に抜け出した異能力者を、不本意ながら一緒にいた同僚の鐵腸さんと追跡することになった。


今は顔写真を見ながら鐵腸さんが、私は不審な音が無いかを聞きながら民家の屋根伝いに偵察中。




暫く西に向かっていると、鐵腸さんが急に立ち止まった。


心音が一瞬早くなったので、何かを見つけたのでしょう。私も彼の隣に降り立った。





「見つけましたか」


「……凶悪な異能力者、だったな？」


「えぇ。情報によれば」


「では、あの通りでひっくり返っているのは違うか」←


「待ちなさい、件の標的だったらどうするんです。確認に行きますよ」




謎の偏見で取り逃がしたとなれば、それこそ問答無用で懲罰房行きだろう。

無言で回れ右をした鐵腸さんの外套を引っ張りつつ、現場へ向かった。




「…うむ。この者で間違いないな」



納得気に頷く鐵腸さん。


いや、危うくも逃すところでしたからね？貴方。



男の呼吸音や心音は一定に聞こえるので、どうやら気絶しているらしい。取りあえず渡された無線で一報を入れておいた。


何気なく踏みしめた地面から、じゃりッと音が鳴る。


はて。この辺りは綺麗に舗装が施されていて、砂利の類いは無かった筈ですが……。

音がした場所へ、今度は踵を落としてみる。


パキッ、と何かが砕けた。




「鐵腸さん。周りに何か落ちていませんか？」



私の言葉に、外套を翻しながらも周りを探り始めた鐵腸さん。

今のうちに私も男について、教えられた情報を、脳内で整理してみる。



「……白い石…いや、何かの結晶が落ちている」


「結晶、ですか…」


「あぁ。光を受けると仄かに輝く、美しい結晶」



この男は宝石店に盗みに入った訳でもないし、異能も全く関係のないもの。

仮に共犯者がいたとして。裏切られたのか、見捨てられたのか。はたまた第三者による何らかの介入があったのか。



………考えられる線が多過ぎる。これは事情聴取に期待するしかありませんね。





「念の為持ち帰って鑑識に渡しておきます。明日は周辺で目撃者探し、が得策でしょうか」


「そうだな」





方針が確定したところで、私は目の前の男に手錠をかけた。







「＿＿＿＿＿＿異能殺人6件、脅迫11件。その他25件の容疑で逮捕する」




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