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ぼぅッとくすんだ白い天井を眺めていれば、聞き慣れた穏やかな声がカーテン越しに聞こえた。
丁度、私の思考回路の渦中にいた人物だったものだから驚いた。
わたわたと内心慌てている間に囲んでいた壁がなくなり、窓から入る日差しで彼の耳元で揺れる鈴が輝く。
「こんにちは、目が覚めたようで何よりです。具合はどうですか?」
「…大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました」
いえいえ、と条野さんはニコリと笑って私の頭を優しく撫でた。
私は気恥ずかしくて、今すぐにでも振り払いたかった。しかし、動かしたことで襲い来る激痛が脳裏を過る。
両者を天秤にかけ、一瞬のうちに熟考した結果、大人しく撫でられておく事にした。
「さて、それでは始めましょうか」
「…え?」
先程といい、今といい、何度も地獄の宣告を聞いているのは気のせいだろうか。
視線を上げれば、笑みを浮かべたままの条野さん。
目が笑っていないうえに、真っ黒い影が見えるのも……気のせいにしては駄目かな。
「言ったでしょう?…"説教は後です"、と」
条野さんは身を屈めて、若干俯く私の顔を至近距離から覗き込む。
「特別に弁解の余地を差し上げましょう。
_____何故、連絡をしなかったのです?」
「ッ…」
私は言い淀む。死ぬには丁度良かった、と正直に言えば、彼の怒気に触れるのは目に見えていた。
「……隙が無かった、ので」
ふいっと彼から顔を背け、適当に考えたそれっぽい理由を言っておく。
「ほう?……まぁ、いいでしょう。そういう事にしておきます」
顎に手を置いて、条野さんは意味深な笑みを零す。
そして、微かに顔を歪ませた。
「______本当に、無事で良かったです」
条野さんは私の首後ろに手を回し、覆いかぶさるように抱きしめた。
抑えきれずに溢れ出す心の内を、少しずつ吐露するように、彼は言葉を紡ぐ。
そんな条野さんの様子に、私は彼の腕を振り払うような真似は出来なかった。
「無茶しないでください。貴女から濃い血の匂いがした時、どんなに肝を冷やしたか分かりますか」
「……」
「私が来なければ、気が付かなければ。貴女はあのまま攫われていたのですよ?」
「…御免なさい」
私は彼の悲痛な声に、ただ謝る事しか出来なかった。こんな事は初めてだから、なんて言えば良いのか分からなかった。
なんとか手を伸ばして、私の頭を抱く条野さんの腕に触れる。
____動くことすら儘ならない私の、せめてもの謝罪の意を込めて。
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時