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〇
条野 side.
「ケガは……無い訳ないですよね」
私は手を伸ばして彼女の頭へ、頬へと触れる。
Aさんの肩がピクリと震えた気がしたが、私はお構いなしに血の匂いが強い部分を指でなぞった。
時折、Aさんが小さく呻く。苦し気な声が私の耳に届く度に、私の胸も比例して苦しくなった。
「だいじょ、ぶ、ですよ。じょ、のさんが、来てくれました、から」
…嘘つき。そんなに傷だらけで、痛みに身体が悲鳴を上げているのに。
誰にも弱みを見せまい、と気を張るAさん。いつもは健気に見えるその姿に、今は苛立って仕方が無かった。
「…じょ、のさん?」
ずっと黙りこくっている私を不審に思ったのか、彼女は少し掠れた声で私を呼んだ。
私は一旦思考を隅に追いやって、今やるべきことを考える。
「…言いたい事は山程ありますが、説教は後です」
私は彼女に外套を巻き付け、その傷だらけで華奢な身体を抱き上げる。
彼女は数秒の空白の後、状況を理解したのか慌て始めた。勢いよく私の胸板を押したかと思えば傷に響いたのか、声にならない悲鳴を上げる。
「今痛い目を見たでしょう。分かったら大人しく収まっていて下さい」
そう言ってから、私は振動を抑えつつ走り出す。目的地は"猟犬"基地内に設けられた医務室。
ポートマフィアに狙われているとなれば、一般の病院では危険すぎる。
そのまま家々の屋根の上を少し移動してから、屋上のある建物で止まった。
この速度で大丈夫か、身体に響かないかを聞こうとしたが、彼女から穏やかな寝息が聞こえたので踏みとどまる。
血を流し過ぎたのか、緊張が解けたのか。前者ではない事を祈りましょう。
誰にも弱みを見せることが無い、完璧な彼女。身体に深手を負っても尚、その防御が崩れることは無かった。
____だからこそ、ドロドロに甘やかしたくなる。
無理にでも捕まえて彼女の全てを暴いて、脆い部分を引き摺り出したい。
しかしAさんに逃げられる事態は避けたいので……手段は悩み処ですが。
___なんて、考えるくらいには。前に隊長が言った通り、私は貴女に『ご執心』らしいのです。
3.狙われる異能《完》
_自覚した彼女への感情
_伸ばされた掌 掴むかは貴女次第
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時