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「……貴方も早く撤収してください」
全く動く気配が無い彼に向かって急かす様な言葉を掛ければ、口元を歪ませる幹部さん。
すっかり暗くなった空に良く映える彼の碧眼には一筋の光が入っていた。
「手前の条件、"全員"が帰るかは指定してなかッた。つまり
「……穴をつかれましたか。細かすぎると嫌われますよ」
「余計な世話だ!……それに、首領直々の命だからな。悪く思うなよッ!」
にぃッと笑ったかと思えば幹部さんは_____
視界の端には振り上げられた拳も見える。
……不味いッ!
「ッ!!」
「へェ、やるじゃねェか」
咄嗟に結晶を纏った手で受け、止めることは出来た。
_____が、結晶が砕けた。
人力で結晶が散った瞬間を初めて見た。信じられなくて、驚きのまま固まっていれば、幹部さんの手が此方に伸びてくる。
何となく触れられたら駄目な気がして、地面を蹴って後方に跳び少しでも距離をとった。
『異能力___想いのカタチ』
相手の行動が読めなければ、此方に勝ち目はない。
…いや、勝ちたいわけじゃないけど。逃走の糸口くらい見つかる筈。
空中に無数の結晶針を作り出し、幹部さんに向けて手をかざす。
仮にこれを全て身体が受けたとしても、軽傷で済むので容赦なく発動させた。
「……その冷静さに判断力。やッぱ一般人のままじゃもッたいねェ才能だなァ」
自身に向かってくる結晶針に慌てもせず、浮かべていた笑みを深いものにする幹部さん。
余裕綽々の表情には少し頭にきたが、次の瞬間にはそんな事など吹っ飛んでいた。
『___重力操作』
幹部さんが赤い光を纏った瞬間、結晶針がパリンッと粉々に砕けた。それも全て。
不意に条野さんが言っていた言葉が脳裏を過る。
【_____異能が効かず、体術に長けている相手だったらどうするつもりです?】
彼が言った、私が絶対に勝てない敵の条件の全てが揃っていた。
答えが思いつかない内に遭遇するなんて誰も思いやしないだろう。ただ目を見開いて呆然とすることくらいしか出来なかった。
「おォおォ、笑う以外の顔も出来るじゃねェか」
手前も人間だな、と狂気じみた笑みのまま、私に近づいてくる。
「…とんだ戦闘狂ですね」
「あァ。頭脳戦みてェに複雑じゃねェし、何より見切ッて動ければ勝てる。こんなにシンプルで楽しい事なんざ、裏社会にはあんま無ェぜ」
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時