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中原 side.
「手前が結晶の異能力者かァ?」
俺がそう尋ねれば、そいつはキョトンとした顔から一転、この状況には似合わないくらい綺麗な笑みを浮かべた。
「聞かずとも調べはついているのでは?幹部さん」
「そりャあな。ただの確認だ」
「たかが小娘を攫うためだけに駒を動かすとは。マフィアは暇なんですね」
大袈裟にため息をついて、椿木は此方を見据える。
俺を射貫くように鋭い光の灯る瞳は、癪だが教授眼鏡に似ていると思った。
「あ、そうだ。取引しません?」
「…誘拐犯相手に随分余裕じゃねェか。一応聞いてやる」
俺が了承すると、奴は笑顔で自身の背後にある結晶を指さした。
「この方たちを解放しますので、お引き取り願えませんかねぇ?」
部下が閉じ込められている結晶。
此処で頷いてしまえば任務失敗。かと言って、部下を見捨てることは…俺には出来ない。
「このままでは私の合図一つで部下の方々は消えてしまいますが」
その言葉で隣にいる部下が銃を向けたのが分かった。
「おい、止めろッ」
「そうですよ。貴方ではなく幹部様に聞いているのですから…それとも」
そこで言葉を止めた椿木の口元が吊り上がった。
嫌な予感がして隣に視線を向ければ、結晶がピキッピキッと音をたてながら部下の持つ銃を覆っていくところだった。
俺は慌てて部下の手から銃を叩き落とす。
「粉々になりたいのですか?こんな風に」
言い終わると同時に、視界にあった銃が『消えた』。
そこに残ったのは、砕け散った結晶の破片だけ。
随分と厄介な異能者が、今の今まで特務課に目すらつけられていなかったとは…。
「見たところ幹部様は部下からの信頼が厚いご様子。そんな方なら見捨てませんよね?」
_____前言撤回。此奴はどちらかというと青鯖側だ。
銃口に自ら額を近づけるようなジサツ行為に、垣間見えた死を渇望する瞳。この世界からの解放を強請った言葉。
あの状況を見て、直ぐに元相棒のジサツ願望者が脳裏を過った。
それに俺の事を良く視ている。あの短時間で俺が部下を捨て駒に出来ない事に気づきやがった。
彼奴の言葉から見え隠れする太宰のような部分に腹が立って仕方がねェ。
「…分かッた」
「話が早くて助かります」
椿木がパチン、と指を鳴らせば結晶が音をたてて砕け散る。
それに合わせて閉じ込められていた部下たちも地面に崩れ落ちた。
俺は二人を回収して待機場所に戻るよう、直ぐに指示を出した。
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時