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条野 side.
「遅かったの、条野」
店から出れば、先に行った筈の隊長が向かいの塀に寄りかかって待っていた。
隊長は身体をゆらりと起こし、来た道を戻り始める。
私も早歩きをして隊長に追いつき、とっくに暗くなった空の下を並んで歩く。
暫くお互いに無言で歩いていたが、不意に隊長が口を開いた。
「_____あの娘にご執心か?」
揶揄うような響きは無く、至って真面目に尋ねた隊長。
確実に胸の内で燻っていた感情の核心を突いてくる事に腹が立つ。隊長のくせに。
私は少しの沈黙の後、隊長の質問に答えた。
「……さぁ、どうなんでしょうね」
「なんじゃ、はっきりしないのォ。己のことじゃろう?」
「まだ分からないのですよ。……ただ、目が離せないだけです」
「カカッ!十分ご執心ではないか!」
「…そういうもの、なんですかね」
「そういうものじゃ。若い者はイイのォ!」
青春じゃ!と隊長は声を上げて豪快に嗤った。
………正直、大変五月蠅いので止めて欲しいのですが。
そんな隊長をいつも通りガン無視して、自分の思考に耽る。
ご執心…かはまだ微妙な処だが、彼女は存在が危ういように見えて、放っておけなかった。
放っておけば直ぐに消えてなくなってしまうような。
それこそ彼女の異能で砕けて無くなった、あの枯れた花みたいに。
初めて会った日から、今の今まで。
耳の奥に残り続ける、気丈に振る舞う姿に隠されたあの哀し気な音。
____そんな健気な彼女を守ってあげたくなった。今はただそれだけ。
「よしッ!条野の恋を"猟犬"みんなで応援するぞッ!」
「恋って……。はぁ、お願いしますから余計なことをしないでください。本気で撃ち殺しますよ?」
2.忍び寄る影《完》
__健気で強がりな彼女
__貴女が砕け散る前に 掬い上げられたら
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時