ヴィラン個性でもヒーローになりたい…？ (ページ45)

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「吉澤」

「分かった」

騎馬戦が始まったが、轟チームは特に動くことをせずに様子見をする。
これは作戦会議の時に決めたことだが、緑谷チームはおそらくスタート直後から逃げの一手で動き回るだろうから、後半疲労が溜まってきたところを狙うという作戦だ。

それに伴い、こちらは出来るだけ体力を温存していこうということになった。

「おい！2位の奴動かないぞ！」

「今だ！攻めろ！」

だが逃げないとなると周りからは格好の餌に見えるのだろう。実際、5チーム位がこちらを狙ってきた。ほとんどがB組で組まれたチームだったが。

そこで出番となるのがAである。

「な、なんだありゃあ？！？！」

「地獄から這い上がってきたみたいなやつが居るぞ？！」

幻覚で地面からワラワラと不気味な黒い手を幾つも出し、相手をビビらせる。
ちなみに幻覚にかけたのは騎馬戦に参加した43人全てなので、生徒には見えているがミッドナイト含めた教師陣には見えていない。

『おおーーーっとぉ？！？！何故か轟チームに近づけない！！！一体何をしたんだあーーー！！！』

『吉澤だな。俺達には見えてないが、選手には何か近づけないものがあるのだろう』

割と直接、相澤先生から「幻覚使ってるな」と解説が入ってしまったため、「行くぞっ！！！」と1チームだけA達の右側に突っ込んできた。

「吉澤」

「大丈夫、だけどあのハチマキ取るなら通すけど」

「……いや、大丈夫だ。防いでくれ」

「分かった」

そのままやってきたチームを黒い手が捕獲、ガシッと騎馬の足を掴んで動けなくさせていた。
勿論、崩し目的ではなく、足を止めるのを目的としているので問題は無い。
そもそもミッドナイトには見えていないから、問題に上がることすらない。

バタバタと外そうと騎馬がもがいていると、バランスを崩した騎手の頭からスルりとハチマキが落ちた。

「……取っておこう」

轟の指示により拾ったハチマキは70ポイント。正直、無くても何とかなりそうなポイントだなってAは思ってしまった。

「このまま吉澤は牽制を続けろ。このままドームを時計回りに動くぞ」

反時計回りに動くことにより、ほとんどのチームが轟チームの右……つまり、Aの視界範囲内に入ることになる。

先程と同じように黒い手を出して威嚇しながら、ジリジリと移動を始めた。