ヴィラン個性でもヒーローになりたい…？ (ページ25)

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それは、突然起こった。

「そんじゃあ、まずは……」

　
言葉を口にしかけた相澤先生が、何を思ったのかバッとセントラル広場の方に視線を向けた。
それと同時に広場の噴水前に、奇妙な黒い穴が音をたてて開く。

　
「ひとかたまりになって動くな！！」

「え？」

「13号！生徒を守れ！」
　

簡潔に指示を出しながら、相澤先生はゴーグルを装着する。
突然の指示に何が起こっているのか、A組は残念ながら着いていけていない。
その中で唯一、Aだけは分かった。

今、あの黒いモヤから出てきた人達。あの人達は悪意を持ってここにやって来ていた。

一言で済ませるなら──ヴィランが来たのだ。

「何だアリャ！？また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン？」

「違う！あれはヴィランだ！！！！」

やはりヴィランだった。何故ならこの雄英高校には必要ない悪意……いや、殺意を感じたのだ。
つい数年前までヴィランの母親に色々と仕込まれてきたAには、分かりやすい殺気だった。

「ヴィランンン！？バカだろ！？ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ！」

　
状況をきちんと読めていない誰かの声がAの耳に聞こえてきた。
アホなのは状況を理解出来ていない人達の方だ。こんなヒーローが沢山いる雄英高校にわざわざ来たということは、『それでも勝てる』という根拠がヴィラン側にあるということなのに。

　
「先生、侵入者用センサーは！」

「もちろんありますが……！」

「現れたのはここだけか、学校全体か……何にせよ、センサーが作動しねえってんなら、"そういうこと出来る個性"が向こうに居るってことか」

「校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割。バカではあっても、阿呆ではありませんわね。何らかの目的をもって計画された、奇襲です」

推薦組の冷静な言葉を聴きながらも、Aは頭の中で考えをまとめていく。
ただ雄英高校に侵入したいのならば、今ここにヴィランがいるのはおかしい。
つまり、彼らの目的ははこのクラスの授業にあったということ以外に考えられない。

「13号、避難開始！合わせて電話も試せ。上鳴、お前も個性で連絡いれとけ」

「ッス！」

「せ、先生は！？まさか1人で！？」

「無茶です！イレイザーヘッドの戦闘スタイルは個性を消してからの捕縛、あの数相手じゃ……！」

「詳しいな緑谷。だが覚えとけ。一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん」

13号に任せたぞと伝えた相澤先生は、勢いよく飛び降りた。

　