はちみつ色の日々 ３

バレンタイン ページ22

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今年もバレンタインがやってきた。

心なしか街中が甘い匂いが漂ってる気がするし
女性も男性もソワソワしてるように見えるから不思議。




"ごめん！仕事長引きそうだから今日無理そう"



そんな街中でこんなメールが届いたけど



「…………お腹空いた」




これ以上の感情はない。

だって別に、会えるなんて思ってなかったし。

それでも１％の望みをかけて作ったチョコブラウニーをカバンの奥に押し込んで
華やかな街中とは真逆へと足を進めた。



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「餃子、メンチカツ、あーピザもいいなぁ」



ザ、飲み屋街まで辿り着くと
バレンタインとは無縁そうなスーツ姿のおじ様達が沢山いてほっとする。

一つ一つお店を覗きながら吟味していると、



「あれ？」



って、すれ違いざまに声をかけられた。




「あ、やっぱそうじゃん、Aじゃん！」




振り返るとお店の看板の光に照らされた顔に
心臓が一瞬でぎゅっとなった。

驚きすぎて声も出ない私に
その人は笑顔で近づいてきて距離を詰めてくる。




「久しぶり」



ふわっ、て懐かしい匂いまでしてきて



「久……しぶり……」



ようやく声を発することが出来た。




「なになに、なんでこんなとこいんの？一人？」

「う、うん、ちょっとお腹空いちゃって」

「へーじゃあ一緒行く？あそこの角の店、めちゃくちゃ唐揚げ美味いよ」

「唐揚げ……」



その単語を聞いて、一気に体が唐揚げを求め始めた気がする。




「行こうぜ、俺も腹ぺっこぺこでさー」

「いや、でも、宏光っ」

「ん？」




私の腕を取り歩き始めようとした宏光を引き止めると
キョトンとこっちを振り返った。




「い……いのかな？」




だって、私たちはもうとっくに別れてる。

二年前に別れて、もうずっと会うことすらなかったのに。

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