艶恋味。

４９ 北山side ページ49

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「先に突き放したのはそっちじゃない……っ」

「え？」




さっきまでの威勢はどこへやら
小さくなった声でそう呟いたA。

さっきは言い過ぎたかな、と心配して来てみたら
玉森とかいうカメラ小僧と一緒にいるのを見て、大人気なく言い合ってしまった。




「まぁまぁまぁ、その辺にしといて」




今まで黙って聞いてたカメラ小僧が俺らの間に入ってきて
Aさん大丈夫？って頭を撫でてる。

さっきも思ったけどこいつ喧嘩売ってんのか？ってほど
俺の前で見せつけるようにしてくんのはなんなんだ。





「もうやめなよ、困ってるの分かんない？」

「関係ないのに入ってくんなよ」

「関係ないのはそっちも同じじゃない？
恋人なわけじゃあるまいし、俺も北山さんも同じ立場」

「……」




まぁそりゃそうだろうけど。

Aは変わらず黙ったままだし
息を吐いて少し冷静になる。

こんなとこで熱くなっててもらちがあかないし
二人に背を向けて、じゃあなとその場を立ち去った。





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「パパ、せんせいに携帯とどけた？」

「おう」

「そっか、よかった〜」




家に着くとまだもえが起きてて
帰ってくるなりそう聞かれ、無事に返したと分かると安心したように笑ってる。

ホッとする、このあいつ似の笑顔を見てると。





「A先生のこと好きか？」

「うん、すき！」

「ママのことは？」

「だいすき！！」

「……そっか」

「パパは？ママのこと好き？」

「おう、もちろん」

「先生のことも？」

「……まぁ、いい先生だよな」





あいつのことを忘れたとかどうでもよくなったわけじゃない
むしろずっと胸の中に苦しいくらいに残ってるのは事実なのに
先生のことも失いたくない。

だからさっきカメラ小僧といるとこを見て、抱き合ってたとも聞かされて
単純に渡したくないって思った。

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