艶恋味。

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「……なんかごめんね、こんな話。やめよやめよ」




もう一本飲もうかな、とビニール袋に手を伸ばすと
不意にその手を取られ包み込まれた。




「俺が聞いたんだしいいんだよ、大丈夫」

「……ていうか、手」

「あ、ごめん。暖めよてあげようとか思ったけど俺の方が手冷たいね」

「ふふ、本当だよ」




ひんやり冷えてるその指先は私よりずっと長くて
手のひらだってずっと大きい。

体感的な冷たさはあるものの
触れられてるってだけで心は温かくなる気がする。




「Aさんは見た目しっかりしてそうなのに
案外流されやすいというか、危なかっしいよね〜」

「そ、そんなことないよ」

「だって今俺が迫ったら、Aさん受け入れちゃいそうだもん」

「？！」




まだ包まれたままだったひんやりしてる手のひらを引っ張られ
その勢いで隣の玉森さんの胸の中に倒れ込む。

一気にドッドッドッ、って心拍数が早くなって
そういえばそもそも何で手を包まれてんの？！って今更ながらに。





「こういう時はどうする？」

「きょ、拒否る！！」

「んはは、分かってんね」




パって笑いながら離れたから、なんだかもう意味分かんない。




「そろそろ帰ろっか、本格的に寒くなってきたし」

「……そうだね」




残ったビールが入った袋を持ってくれて
もう片方の手を差し出してくる。




「手繋いで帰る？」

「なんでですか」

「ふふふ」




寒くて頬が赤く染ってると思ってたけど
これはちょっと酔っ払ってない……？

私に拒否られた手を自分のポケットに突っ込んで
行くよー、って急かされ私もベンチから立ち上がった。




「でもやっぱまじで寒くない？コート貸そっか？」

「大丈夫だよ、玉森さんの方が寒そうだし」

「んふ、なんか返答がAさんって感じだな〜」

「え？」

「あんまり甘えてこない感じ？」

「まぁ……可愛く甘えられるキャラだったら今頃彼氏の1人や2人いますよね」

「えー、俺はAさんのそういうとこ好きだけどな」




"好き"とか久しぶりに聞きすぎてビビる。

財産でも狙ってる？私に財産なんてないよ？って不信感に苛まれながらも
二人で帰る帰り道は会話も弾んですごく楽しかった。

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