艶恋味。

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「だってあの電気屋さんの子供のこと庇ったんでしょ？」

「そうだけど、でもそれは関係ないよ？！
ただちょっと色々と子供たちのやり取り聞いてたし、相手側のお母さんの言葉にちょっとムッとなっちゃったから……」

「それはAさんが電気屋さんに深入りしてるからじゃない？
色んな事情を知ってるからこそ、感情移入はしちゃうよね」

「……」




確かに、そう言われるとそうかもしれない。

もし何も関わってない状態だったら
もえちゃんのことを瞬間的に庇ったりしただろうか。

宏光さんやもえちゃんのこと何も知らないくせに、なんてことはきっと思わなかった。






「すき、なんだね？」




言葉をなくした私を覗き込むように。

そのタレ目な可愛い視線から私は目を逸らして、首を横に振った。

だって違う、好きとかそういう感情じゃない。




「違うの？」

「違う、子供の保護者だよ？」

「でもその保護者と関係持ってるんでしょ、都合のいいようにAさんが利用されてるようにも見えるし」

「……それはもっと違う」




周りからはそう見えるかもしれないけど
私はそんなつもりで会ってるわけじゃない。

ちっぽけなプライドかもしれないけど。






「私が……利用してるんだよきっと、宏光さんのこと」




寂しさを埋めて欲しくて？

欲を満たしてほしくて？

その瞬間だけの、偽りの愛が欲しくて？




「じゃあ何でいつも電気屋さんのことになると
そんな苦しそうな顔するのかな」




困ったように笑う玉森さんに私は何も言えなくて
握りしめたままだった缶を一気に飲み干した。

クラっ、として目を瞑ると
さっきの宏光さんの顔が思い浮かんでまた苦しくなる。



あんなの絶対、まだ奥さんのこと忘れられてない。

いっそもっと軽いヤツだと割り切って何も知らずにいたほうが楽だったのに
あんな姿を見てしまったら、私はもう後には戻れなくなる━━。

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