艶恋味。

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「玉森さん、仕事どうです？慣れました？」




なにか話題を、と当たり障りのない質問をすると
白い息を吐きながらうん、って。




「子供たち可愛いし、撮りがいがあって凄い楽しい。
こっちの生活も、ゆったりしててめちゃくちゃ今充実してるんだよね〜」

「そっか、それは良かったです」

「全部Aさんのお陰」

「え？わたし？」




想定外に私の名前が出てくるから驚いて隣を見ると
ニッ、て可愛い笑顔をのぞかせてる。




「Aさんが仕事紹介してくれて、子供たちを撮ってるうちに思い出したんだよね"撮ることの楽しさ"を」

「……前は楽しくなかったの？」

「うん、この前もちょっと言ったけどあっちにいた時は卑屈になって投げやりになってた気がするし
いいものを撮ろう！って気合いだけ入って、いつの間にか楽しむ気持ち忘れてたなって」




前に言ってた"皆お父さんに恩を売ってるだけだ"って
そういうことがあると、確かに楽しく撮るなんて出来なくなるんだろうなぁ……。

だってきっと一生懸命何かを撮ったところで
その作品じゃなくて、その先にある権力しか見てくれないんだから。




「Aさんが俺の写真見て笑ってくれたのも凄い嬉しくて
」

「そんな、私なんて何も…」

「ありがとうね、初心を思い出させてくれて」





本当にそんなこと言われるほどのことなんて何もしてないのに。
あまりにも優しくそう言ってくれるから
今の弱ってる気持ちも相まって、なんだか泣きそうになってくる。

それを誤魔化すようにビールをグビっと煽って
また空を見上げた。

さっきよりも更に綺麗に見える星空。





「なんか、写真って正解っていうのがないじゃないですか？
だから見る人によって感じ方も見る視点も違うと思うし、だからこそ玉森さんの写真で何かを感じたり笑顔になってくれる人は絶対沢山います。
だからその偉いお父さん？のことだって逆手にとればいいんですよ、お父さんの力で色んなパンフレットとかに使ってもらえるなら使ってもらって
それを見た人に何かを感じてもらえたら玉森さんの勝ちですよ。
絶対、玉森さんの写真は魅力的ですから！」




励まそう、とか思ったわけじゃないけど
自然とでてきた言葉。

つい力が入っちゃって捲し立てるように言っちゃったけど玉森さんは
確かにそれいいね、って蕩けそうに笑ってくれた。

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