艶恋味。

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「うう、寒い」




あれからなんだか家にも帰りたくなくて
コンビニでお酒を買い込み、近くの公園のベンチに腰掛けた。

でもやっぱり寒空の下にいるとかなり冷え込む。

かじかむ手で缶を開けて、グビっと喉に流し込んだら
空腹なこともあり、一気にゆらゆらする。

そのまま点を仰げば、澄み切った空には星が綺麗に瞬いていた。





「はぁ……」




何してんだろう、私。

深入りしちゃいけないとあれだけ自分に言い聞かせてたはずなのに
いとも簡単に踏み込んじゃいけないとこまで踏み込んでしまった。

代わりにオムライスを作るだなんて
一番恩着せがましい行為じゃん。




「あれ？Aさん？」




その時公園の入口から私を呼ぶ声が聞こえて
空から視線を移すと、ロングコート姿の玉森さんの姿があった。





「どうしたの？こんなとこに一人で」




驚きながらこっちに足を進めてくるから
ベンチの隣に置いてある大量の缶ビールを見られるのが恥ずかしくて咄嗟に隠そうと思ったけど
隠せるはずもなく。




「凄いね、めちゃくちゃ飲む気満々だね」

「あ……はは……」




完全に痛い女だな、この状況。

でもそんな私に玉森さんはビール缶の袋を退かして
くっつくように隣に座り込んできた。

瞬間に、ちょっとだけほわっと温かくなる。




「俺も一緒に飲んでいい？」

「え？！」

「俺も飲みたい気分だったんだよね〜。
しかも外で飲むとか楽しそう」

「いや、でも寒いですよ？」

「厚着してるから大丈夫」




そうは言ってるけど、玉森さんの白い肌が赤く染ってる。

頬とか鼻とか耳とか。




「Aさんこそ寒くない？コート貸そうか？」

「いやいやいや、私は脂肪着てるから大丈夫」

「んはは、全然脂肪ないじゃん」

「そんなことないのよ、お腹とか腰とか見えないとこやばいんだから……」





そうは見えないけど、って缶ビールを手にして
いただきまーすってプルタブを開けた。

飲む前に缶を合わせてくるように寄せてくるから
コツン、と軽く缶をぶつけて乾杯。





「ぷはー、おいしい」

「玉森さんそんなにお酒好きじゃないですよね」

「うん、でも飲む時は飲むよ」

「そう…なんですね」




明らかに何かがあったのは明白な私のことを、すぐに聞くことはせず
自然にこの場の空気に溶け込んでくる。

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