艶恋味。

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「じゃあA先生、これからもうちの子よろしくお願いします」

「分かりました、安心してお任せください」




そして個人面談も終盤に差し掛かり、



「えーと、次は………」



北山もえちゃん。
今日のラストにふさわしいラスボス感。

ふー、っと一息吐いてから
教室のドアを開けた。

無意識に目を瞑っていたのを開けると、



「先生、こんばんは」


「……あ、すみませんお待たせしました」



いつもの見慣れた、もえちゃんのおばあちゃんの姿だった。

安心、したような
ちょっと残念なような。





「えーと、もえちゃんは園ではとても優しくて気が利く子です。
困ってる子に率先して手を差し伸べたり、先生やお友達の話もきちんと聞いてくれて。
少し大人しい性格なのかなとは思いますけど
話しかければ沢山話してくれるし、ここだけの話もえちゃんにはかなり癒してもらってます」



ヤンチャな子もいれば、なかなか言うことを聞かない子
もちろんどんな子でもみんな可愛いけれど
もえちゃんは割と大人しめであまり手をかけることがない子だった。



「良かった、いい子にしてるみたいで。
うちの娘が亡くなった時はもう元気がなくてどうしようかと思ってたんですけど
この園に来るようになって少しずつ笑顔を取り戻してきて安心しました」

「亡くなっ……た？」

「あ……聞いてなかったです？
うちの娘は病気で亡くなったんです」




……知らなかった。

てっきり離婚とかそういう理由でシングルファザーだとばかり思っていたから
突然知った真実に驚きを隠せない。




「亡くなってからは、うちでもえを引き取るつもりだったんですけど
男親一人じゃ小さい子を育てるのは大変だと思って。
でも宏光くん…、あ、もえの父親が一緒にうちに来て自営の電気屋を継いでくれたんですよ」

「そうだったんですか……。
すみません、何も知らなくて」

「いえいえ、先生のお陰でもえは幼稚園楽しいってニコニコしてくれますよ」



宏光くんも人当たりがいいからうちの電気屋も右肩上がりなのよ、って嬉しそうに。




「そうだわ、そろそろ宏光くんも来るんじゃないかしら」

「え？」

「私今日予定があって、仕事早く切り上げて面談に来るからって……、
あ！来たきたっ」




噂をすればタイミングよくドアが開いて
こんばんは、と入ってきたのは
もえちゃんのパパ、宏光さんだった。

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