艶恋味。

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「もえちゃん、どうしたの？」

「うん、サンタさんにおてがみ書いてるんだけど」

「だけど？」




うーん、って持っていたピンクのペンを机に置いた。




「サンタさん、なんでもくれる？」

「ど、どうだろう、何が欲しいの？」



さすがに迂闊には返事出来なくて聞いてみると
"オムライス"って一言恥ずかしそうに。




「オムライス？」

「トロトロのオムライス、おばあちゃんもパパも作れないから…」

「そっ……か」




それってもしかして……、



「えー！もえちゃんのママ、オムライスつくってくれないのー？」



その時私たちの話を聞いてたのか、同じクラスの葵ちゃんが話に割って入ってきた。




「あ、そっか！もえちゃんママいないからか、かわいそうー」

「ちょっ、葵ちゃんっ」



慌てて止めに入ったけど、私の腕の下を抜けたもえちゃんが立ち上がり
ガリっ、と葵ちゃんの頬を叩くように引っ掻いてしまった。

本当に一瞬の出来事で、



「う……、うわーん！！！」



みるみる顔が歪んで大泣きする葵ちゃん。

その泣き声に我に返ったのか
もえちゃんはその場から廊下に走って逃げていってしまう。




「待って、もえちゃんっ」

「わーーーん！！」

「葵ちゃんも、大丈夫？！」




とりあえず葵ちゃんを抱き上げて廊下に出るけどもう姿は見えなくなってて
騒ぎを聞き付けて来てくれた他の先生たちの助けも借り
なんとかもえちゃんも見つけ騒ぎは抑えることが出来た。



けど、





「信じられないわ、女の子なのに顔に傷が残ったらどうしてくれるの」





葵ちゃんのお母さんがなかなかの厄介な人で

帰りの時間、葵ちゃんママと宏光さんと園長と私の四人が
園長室に集まって話し合いをすることになってしまった。





「申し訳ございません、私がついていながらこんなことに」

「大体、そちら父子家庭なんでしょ？
一人だとなかなか見てあげられないのもわかるけどもう少しちゃんと育ててあげたらどうかしら」




ろくにその時の状況も聞きもせずの上から目線のその言葉にカチンときた。

どうして何の事情も知らない人にそんなこと…っ。




「もえちゃんは、ちゃんとしたいい子ですっ！
なんの理由もなくお友達を傷つけるような子では……」




と、ここまで言ってハッとした。

つい自分の立場も忘れて本音が……。

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