艶恋味。

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「Aはなんで幼稚園の先生やってんの？」

「んー、単純に子供が好きだからかなぁ」

「確かに、可愛いよなぁ子供って。自分の子だと更に」




二本三本、とお酒が進むにつれて会話も弾んでく。

何度か会っていたものの、体を重ねること中心だったから
こんなに話すのは初めてなんだもん。




「もえがいつか嫁にいくとか考えたくもないくらい可愛い」

「嫁に行く前にも、彼氏連れてきたりとか色々試練はありますよ」

「だーっ、やめろやめろ」

「ふふ、宏光さん全力で圧かけそう彼氏さんに」

「いっそもえも、Aみたいにずっと独身でいてくれたらいいのにな〜」

「……喧嘩売ってます？」

「んは、ごめんごめん」




痛いとこついてくるな…！と肩をぶつけてもケラケラ笑ってる。




「私だって、お嫁にいけるならいきたいですよっ」

「へぇ、その気持ちはあんだ？」

「ありますけど……いや、ないかな……」




お母さんを残してお嫁にはいけないし
でも、それを理由にしてるだけで本当は結婚なんて夢見てるわけじゃないのかもしれない。





「ふは、どっちだよ」

「……いいもんですか？結婚って」




こんな関係性を持ちながらこんな質問するなんてバカみたいだけど
聞いてみたかった。

宏光さんが、奥さんのことをどれだけ好きだったのか。





「んー、どうだろうな」

「ええ、曖昧」

「いいもん、だけど」

「だけど？」




コトン、と缶をテーブルに置いた。

目を伏せて考え込んだあと、んーって上を見上げながら。




「それを失った時の喪失感が半端ない」




なーんてな、ってすぐに茶化してたけど
きっとそれが宏光さんの本音。





「寂しい……ですか？」

「もえもいるし、んなこと言ってらんねぇよ」

「もえちゃんはもえちゃん、宏光さんは宏光さんでしょ？」




もえちゃんが寂しいのはもちろんだけど
宏光さんだって、最愛の人を亡くして寂しくないわけがない。

"父親"という存在であるために強くいなきゃいけないのは
とてもしんどいと思う。





「……そろそろ飲むのは終わるか」




まるでこの話をはぐらかすように私が持ってた缶チューハイも奪ってテーブルに置いた。

そのまま私を抱き締めて、髪を撫で、キスをする。

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