艶恋味。

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「恩を売る……？」

「うちの親父、おっきい会社の社長だからさ。
写真採用の二言目には、お父さんによろしくお願いします〜って。
誰も写真の内容なんて見てないんだよ」

「そんなこと……」





なんだか闇に触れてしまったみたいで言葉に詰まる。

どう、声をかけたらいいのか……。





「……あ、ごめん。こんな話」

「ううんっ、私こそなんかごめんなさい」

「なんで謝るの？嬉しかったんだよ、俺の写真で笑顔になってくれて」

「あっ、別にディスって笑ったわけじゃないからね？！」

「んはは、分かってるよ」





イケメンで、人当たりが良くて、お金持ちで
そんな人でも悩みを抱えることもあるんだな。

何もかもに恵まれて、悩んだことなんてないのかと思ってただけに
なんだか玉森さんのことを見る目が変わってしまった。






「お母さんも玉森さんの写真凄く好きだわ」

「ほんと？ありがと〜」





そう言って笑うそのふにゃふにゃ笑顔は
いつもの玉森さんの笑顔だった。






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「じゃあ今日はごちそうさまでした」

「いえいえ、こちらこそ母も楽しんでたから有り難かった」

「また美味しいもの作る時は呼んでね」

「ふふ、分かった」





もうすっかり辺りは暗くなってて
田舎らしく街灯も暗いから更に暗く感じるんだよね。

玄関先で見送ってると
あっ、と思い出したようにカバンをガサゴソしてる玉森さん。





「これ、Aさんにあげようと思って」




そう言って渡されたのは一枚の写真。

夕日に照らされてる私の後ろ姿。




「わっ、いつの間に？」

「初めて会った時覚えてる？
あの時夕日撮ってたんだけど、たまたま写ってたのが一枚あって凄く綺麗だったから」

「全然綺麗じゃないよぉ……」




もちろん夕日はめちゃくちゃ綺麗だけど
なんとも言えないスタイルがいいわけでもない私の後ろ姿なんてね……。




「Aさんはもっと自信持った方がいいと思う」

「え？」

「都合のいい女の位置付けになるような存在じゃないよ」

「……それはどういう」

「あっ、電化製品の都合のいい女になっちゃダメだよっていう」

「もういいよ……、気付いてるんでしょ？」

「ん？なんのこと？」




誤魔化しながらの会話にもう無理があるもん。

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