艶恋味。

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「美味しい！ハンバーグめちゃくちゃ美味しい」

「ほんと？良かった、普通のハンバーグなんだけどね」

「こういう手作りのハンバーグ、めちゃくちゃ好きなの」





予想通り、玉森さんは幸せそうな顔で私のハンバーグを食べてくれた。

その細い体のどこに入るんだろうってくらい
ハンバーグもサラダも味噌汁もご飯もおかわりして、満足そうにご馳走様でしたとお皿を片付けてくれてる。





「あ、いいよ。あとで私洗うから置いといてくれれば」

「ううん、ご馳走になったしこれくらいはさせてよ」

「……そう？」




あまり慣れてない手つきで茶碗洗いをしてくれて
その隣で私はそれを布巾で拭いて、並んで立ってるのがなんだか不思議すぎる。





「茶碗洗いなんて久しぶりにしたかも」

「ふふ、分かります。なんか手際がそんな感じ」

「やっぱり？ぎこちない？」

「まぁでも若い男の子なんてそんなもんだよね」





変に手馴れてる方が戸惑うかもしれない。

そんな話をしながら洗い終えた食器を戸棚に閉まってたら
ダイニングテーブルに置いておいた携帯の着信が鳴った。




「Aさん、電話鳴ってるよ〜」

「あ、うん」




誰だろう、と戸棚のとこからテーブルのとこまで戻ると
一足先に食器を洗い終えた玉森さんが携帯を渡してきてくれた。

それを受け取ると、画面には"電気屋さん"の文字。

ヒヤッ、と一気に凍りつく。




「……随分とマメな電気屋さんだね」

「う、うん……エアコン…の、調子も悪い、から」




とことん玉森さんには悪いとこばっかり見られてる気がする。

タイミングがあまりにも悪すぎて。





「出ないの？切れちゃうよ？」

「……あとでかけ直すから大丈夫」





そこでタイミングよく切れた電話をポケットに突っ込んで
何事もなかったかのようにまた食器をしまってみるけど、他の上手い話題が思いつかなくて沈黙が流れた。





「あんまりさ、頼りすぎない方がいいんじゃない？」

「え？」




沈黙を破ったのは玉森さんで
その言葉がどういう意味を持ってるのか、咄嗟には考えられなかった。

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