艶恋味。

２６ ページ26

.


「そういえば昨日、大丈夫だった？」

「え？」




急に昨日のことをぶり返されて思わず焦ってしまう。
飲み会の後、宏光さんとこっそり抜け出したわけだし。




「結構飲んでたみたいだけど、ちゃんとお家帰れた？」

「あ、う、うん、帰ってすぐに寝ちゃった」

「ふーん、そっか」

「ご、ごめんね……？声もかけずに……」

「ううん、いいんだけどさ大丈夫なら」





なんだか嘘をついてることにモヤモヤするし
勘づかれてる気もするから、なんだか会話が上手く出来ない。

その気持ちからかいつの間にか早足になってて
玉森さんより少し前を歩いてた。




「そ、そうだ、それより玉森さんどう？
先生たちみんな上手くやっていけそう？」

「うん、みんないい人だし楽しくやっていけそうだなって思ったよ」

「そっか、良かった」




もちろんみんないい先生達なのはもちろんだけど
玉森さんも柔らかい雰囲気を持ってるから馴染みやすいんだと思う。





「夕飯なににしようかな〜、Aさん家なぁに？」

「うーん、うちは適当にハンバーグとかにしようかなぁ」

「ハンバーグ！！」




立ち止まり目をキラキラさせてこっちを見てくる。

こ、これは……




「……食べます？」

「食べるっ！！」




こうくるやつですよね。

本当に不思議な距離感を持つ男の子だ。







.






「あら、玉森くん」

「どうも〜おじゃまします」




一緒に買い物を終えて、そのまま家に来た玉森さんは
もういつの間にか顔見知りらしい母に笑顔を見せて、母の顔を緩ませてた。





「玉森さんも一緒にご飯食べてくけどいいよね？」

「いいわよ、是非是非」

「やったぁ、ありがとう」




これお土産、ってちゃっかりさっき買った甘いスイーツを母に渡してて。




「でもお母さん、あんまり沢山食べちゃダメなんだよね？
だから後で俺と一緒に食べようね」

「ふふ、そうね」




私が甘いもの食べ過ぎないで！って言うとプリプリ怒るくせに
玉森さん相手だとこうも違うのか、とキッチンで食材を袋から取り出しながらため息が出た。

２７→←２５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す