艶恋味。

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「これ仕事の車なんだけど
修理費とか補償してもらうことになると思うけど」

「あ…はいっ、それはもちろん」

「高くつくかもよ？結構傷いってるし」

「は……い、大丈夫です…。
本当に申し訳、

「なーんてな。」





………え？




その不意な言葉の訳がわからず立ち尽くしてると
いつの間にか立ち上がって目の前に来ていた彼は軽く笑みを浮かべていた。





「チャラにしてやってもいいよ」

「えっ、でもっ」

「ただし一晩付き合ってくれたら、だけど」




薄暗い駐車場の灯りの下で見る彼の瞳に
悔しいけど、ドキッとしてしまった。

名前も何も分からない男にとんでもない事を言われたのに、





「………っ、はぁ…ぁっ、んっ」





素直に一晩の関係を持ってしまう。

金銭的な問題とかをチャラにしてもらうっていうのは大前提にしても
こんな簡単に男について行く女だったっけ、私。

でも、これでいいんだと思う。

守るものはもう何もないし
やれる時にやっておかないと、次がいつあるかなんて分かんない。



私の人生、これでいいんだ。





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「もう帰る？」



行為が終わり、
割と綺麗めなホテルのベットに横たわったまま服を着る私に声をかけてくる彼。



「あ、はい」

「ふーん、そ。」




…………それだけ？

連絡先とか聞かれたらどうしよう、とか思ったけど
そんな心配いらなかった。
ま、これが現実だよね。






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「はーい、みんなー！帰りの準備してー」



そうだよ、昨日のことなんて忘れて
また淡々と毎日を過ごせばいい。



「あれ？もえちゃんお迎えまだ来ないの？」

「うん、今日はねおばあちゃんのお迎えじゃないから」

「え、そうなの？じゃあ誰が、
「あ、パパ〜っ！」




嬉しそうに私の前を通り過ぎてくもえちゃんを
追いかけるように視線を向けた先には、




「？！？！？！」

「あ。」




忘れよう、とさっきまで思っていた昨日の相手。




「先生、さようならっ」

「あっ……、さ、さようなら………」




淡々とした毎日が
崩れ去っていくような、そんな音が頭の中に響いた気がした。

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