艶恋味。

１５ ページ15

.


「あちちち、はいどうぞ」

「あっ、ありがとうございます」




カフェラテのグラスが熱かったのか
あちち、って耳を触って指を冷ましてる。

こんな可愛い仕草、女の私でもしたことない。




「座って座って、食べよ〜」




ラグの上に置かれたおっきなテーブル。

ペタンと座った玉森さんが隣をぽんぽんしてきたけど
さすがにそこの位置はどうかと思いとどまり
テーブルを挟んだ向かい側に座った。




「これ、一応うちの園の行事予定表と、」

「うんうん」

「園内の簡単な地図と、職員紹介のプリントです」

「うんうん」

「あとは入園証も必要になるので、」

「ねぇ、とりあえず食べようよ。
いちごが早く食べてって俺に訴えてる」

「え？いちごが？」



カバンから出したプリントから
ケーキの上のいちごに視線を移してみたけど、



「ね？訴えてるでしょ？」



分かんないし。

そしてその間にも、玉森さんは上のいちごを指先で摘んで
パクリと一口放り込んだ。



「ん〜〜〜っま！！」



いちごを含んだぷっくりした頬で
蕩ける笑顔を見せつけられ、目眩がする。




「そんなに美味しいですか？」

「俺甘いの好きなの」

「ふふ、好きそうな顔してますもんね」

「え〜？どんな顔？」

「んー、そう言われると答えられないけど」

「だったらAさんも甘いの好きそうな顔してると思う」

「え？私が？」

「可愛くて、甘いものが似合う顔」

「か、かわいい……？」




あまりにも言われ慣れないその単語に一瞬思考が停止した。

こんな可愛すぎる人に可愛いって言われても……
とんだお世辞にも程があるでしょ…。




「そんなお世辞言っても園での仕事のお金は上がりませんよ？」

「別にそんなの望んでないもん。
なんなら別にそんなお金なんていらないし」

「え？」




あむ、ってケーキを口に含んで
唇の端にクリームがついちゃってる可愛いお顔に反して
少し空気がピリついた気がした。




「お金のために写真撮ってるわけじゃないからね」

「あ、うん……それはそうですよね」

「だから凄い楽しみ、子供たち撮るの」




早く食べてよ、ってまたさっきのふにゃふにゃに戻って言われるから
いただきます、をしてケーキを口にした。


甘さ(クリーム)と甘さ(カフェラテ)と甘さ(玉森さん)のトリプルパンチで
なんだかもうどうにかなりそう。

１６→←１４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す