艶恋味。

１４ ページ14

.


「じゃあ、よろしくお願いしますっ」

「おっけ〜。
これケーキ？美味しそうな匂いする〜」




私の手土産を手に掲げて可愛くクンクンしながら
緩〜くうちの園のカメラマンに決まってしまった。




「ここのケーキ、この辺だと有名で美味しいんですよ。
特にショートケーキは絶品です」

「まじ？！俺いちごの超好き！」

「ふふ、良かった。是非食べてみてくださいね」




ブンブンしっぽを振ってるのが幻覚で見えちゃうくらいの可愛さに思わず顔を緩ませながら
もう用事も済んだし帰ろうとすると、




「待って、一緒に食べようよ」

「え？」




引き止められた。




「これ何個か入ってるんでしょ？
美味しいカフェラテ入れるから一緒に食べよ」

「あ…、いや、」



さすがに家に上がるのはまずくない……？

園児の父親と関係を持ったくせに何言ってんのって感じだけど
それは知らなかったんだもん、不可抗力だし。




「いちご嫌い？」

「ううん、好き、だけど……」




なんとも悲しそうな目をするから
なんだか心がチクチクしてくる。

私がこのままここで帰ってしまったら
この子は一人でカフェラテとショートケーキを寂しく食べなきゃいけないじゃないかって
想像が膨らんで、一緒にいてあげなきゃって謎の使命感が。





「じゃあ一緒にたべよ？」

「う……ん、じゃあついでに仕事の話もしますか。
依頼料とかの関係もありますし、」

「やった！入って入って〜♪」

「………」




話、聞いてた？
仕事の話ついでにケーキを食べましょう、ってことにしたんだけど……


でも楽しそうにキッチンへとパタパタ小走りしてくその後ろ姿に
まぁいいか、と思っちゃう。

引っ越してきたばかりだというのに
フワフワのスリッパが用意されてるし
部屋の中も綺麗で全てが揃ってる。

さすが別荘、恐るべし。





「カフェラテ、すき？」

「あ、うんっ」




キッチンから顔を覗かせてニコニコと。

何がそんなに嬉しいんだろうってくらいのそのふにゃふにゃさに
じんわりとこっちまで癒されてくのが不思議。

１５→←１３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す