艶恋味。

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はぁ…、とため息が漏れて
そのままキッチンの床にペタンと座り込んだ。


父が亡くなって以来
病気持ちの母を一人には出来なくてずっと実家にとどまっているけど
最近、凄くしんどい。

母のことは嫌いなわけじゃないけど
ずっと逃げられない檻に閉じ込められているような
そんな感覚に襲われてしまう。






「………ちょっと買い物行ってくる」



冷静になりたくて
帰ってきたばかりの家からまた外に出る。

はいはーい、って母の声を背に
パタンと玄関の扉を閉めると冷たい風が頬をさす。





私は一体、毎日何をしてるんだろう━━。






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「チョコレートパフェとフルーツパフェと
抹茶ケーキにモンブラン、生チョコタルトもください」



えーーーい！！
もうこうなったらヤケ食いだ。

普段病気持ちの母の前では甘いものを食べるのを我慢してる分
こういうときに爆発してしまう。

だって食べなきゃやってらんないんだもん。






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「ありがとうございました〜」

「ご馳走様でした…」




そしてファミレスを出ると一気に後悔が襲うのも
もういつものパッケージみたいなもの。

食べたら食べた分だけ身になってしまう年齢だし
そうは分かっていてもなぁ……。

せめてもの足掻きのためにと自転車で来たのをいいことに
運動がてら寄り道をして帰ろうと自転車に手をかけた瞬間、


ガチャン……！と倒れてしまい、
運悪くも隣に停まっていた車にぶつかってしまった。



「うっそ……っ」



や、やばい……っ。
倒れた衝撃で車には傷がついていて
サーッと血の気が引くのを感じる。



「うわ、まじかー」



その時、ぶつかってしまった車から降りてきた男の人。
傷を屈んでマジマジ見ると
私の顔を見て、あーあとまた口を開いた。



「ご、ごめんなさい……っ！
あの、これ……っ」



こういう時はどうしたらいいんだっけ？！
警察……、いや、まずは相手の、

「どうする？これ」

「え？」



動揺からどうしたらいいのか分からない私とは正反対に
その男の人は冷静に屈んだまま私を見つめてきた。

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