艶恋味。

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「おいおい、大丈夫か？」



へたっとなった姿に驚いて車を降りてきた宏光さんは
私の腕を引き上げるようにして立たせてくれる。




「なんで、うちの母が……？」

「仕事の配達帰りに道端に座り込んでる人いてさ
具合でも悪ぃのかと思って声掛けて
もう歩けないっていうから車に乗せたのよ。
そんで話聞いてると、娘は幼稚園で先生やってるっていうし
名字は先生と同じだし？」

「……なるほど、」



だから私の母だと知ったわけね。



「すみません、ご迷惑おかけしました」

「いや、別にそれは帰りのついでだし大丈夫だけど」

「すぐ起こして連れて帰りますね」



なんだか無性に恥ずかしかった。
弱った母を助けられて、それが私の母と知られて。

失礼します、と後ろのドアを開けて起こそうとすると
その手を掴まれ制止された。




「あの……？」

「ついでだから送ってくよ。
連れて帰るとか大変だろうし、先生も助手席乗って」

「え？大丈夫ですっ！そこまで迷惑かけられませんからっ」

「いいから乗れって、ここで母ちゃん起こして降ろすとか俺が悪者みてぇじゃん」



……それは確かにそうかもしれない。

けど、相手が相手だしあんまりもう関わりたくないのに。




「乗って、家案内してくんない？」




正直、この手の温もりにホッとしてる。

さっきまで心配で探し回ってた不安から解放されて
この人がいてくれて、助けてくれて。




「じゃあ……すみません、よろしくお願いします」

「ん、」



車に乗り込むと暖房が聞いてて暖かい車内。

電気屋さんの車だからか、少し機械の匂いがしてる。




「ある程度はさっき先生の母ちゃんに道聞いたんだけどさ
この辺あんま来ないし分かんなくて」

「ですよね、この辺街灯もあまりなくて暗いし」

「そうだよ、女なんだから歩く時とか気をつけねぇと」

「……それ、あなたが言います？」

「ははっ、確かにそりゃそうだ」




隙をつかれて私を抱いた張本人に言われてもって感じ。
でも当の本人は楽しそうに笑ってて
罪悪感なんてまるで感じてなさそう。

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