泣き顔マニア ２

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それからまともに裕太と話も出来ないまま
あっという間に金曜日。

明日は……、北山先輩の誕生日。





「お疲れ〜い」


「あ、お疲れ様ですっ」




仕事を終えてエレベーターを待っていると
ちょうどやってきた北山先輩。

明日のことばっかり意識しちゃってキョドってしまう私とは反対に
いつも通りな先輩はやっぱりよく分からない。





「今日定時上がりですか？
珍しいですね」


「明日のために体力温存しとこうかと思って」


「…………」


「ふはっ、んな睨むなよ、冗談だろうが」





全然笑えない冗談なんですけど。




「まぁそれは置いといて、
明日の約束覚えてっか？」


「それは……、もちろん」


「なんかさ、飯作ってよ」


「え？！私がですか？！」


「うん、手料理食いたい」


「いやっ、そんな得意じゃないし……
どうせ誕生日ならおいしいもの食べに行きましょうよ！奢りますし！」


「やだ、家がいいもん」


「でも……、」





この期に及んで家に行くのを戸惑ってるのを悟られたくなかったけど、





「まだ迷ってんの？」


「い、いえっ……、」




裕太の様子が気になる。

けど、今ここでそんな相談をしたところで
先輩に失礼な話なんじゃないかと思うと言えなくて。





「色々……、き、緊張するじゃないですか……」




咄嗟に出してしまった言葉に
先輩は分かりやすく目を泳がせ、口元を抑えた。




「んな緊張なんてもん考えてる余裕もなくなるって」


「なっ、どういうことですかそれっ///」


「んふ、楽しみに待ってるわ」





口元を抑えたのは、緩んでる顔を隠すためだったんだなって気付いちゃうほど
嬉しそうなその表情に、胸がツキンと刺されるように痛い。


何も知らずにこのまま先輩といれば
いつか好きになれるし、無駄に傷付かなくて済むのに………





「じゃあ……、明日」


「なんなら今から家来る？」


「なんでですかっ、///」


「ふはは、うそうそ。
明日起きたらとりあえずメールちょうだい」





先輩の言葉通り
本当にこのまま家に行っておけば良かったって後悔することを
この時の私は知るはずもなかった。

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