泣き顔マニア ２

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「寂しくて、泣かないでくださいねっ！」


「ふっ、俺のセリフだっつーの」




私の強がりを分かってるのか、
ポンって優しく頭を撫でてくれる手。

この温かさ、安心して好きだったなぁ……。




「……あ、タクシー来ましたね」




良かった……。
これ以上話してたらさすがに涙腺がやばかった。

手を離した先輩は
柔らかく微笑んで、私の手を取り
ギュッと握りしめてくる。





「元気でな。」





………ずるい、やばい。

反則だよ、その声と顔は。





「先輩も、元気で頑張ってください」





でも、もう泣かないって決めたから
そう思うと無理した笑顔とかそういうのでもなく
ちゃんとした笑顔が作れてたと思う。

それにつられるように先輩も笑顔になって、






「じゃあな」





って、お互い最後は心からの笑顔で別れられた。






いつもは少し涼しすぎるタクシーの車内も
今日だけは、心も冷やしてくれるみたいで心地よかったのを
今でも覚えている。




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━━━それから一年。



「Aさーん、これはこれで合ってますか？」


「うん………、うん！完璧だ！ありがとう」


「へへ、良かった〜♪」




ちょっと緩さとタメ語は気になるとこだけど
あの頃全然使えなかった後輩も、かなり仕事が出来るようになった。






「今日？時間あるある！
むしろ作る！！」




昼休みにこっそり電話してるつもりっぽい
丸聞こえな裕太の会話も慣れたもの。

きっと電話の相手は遥さんで
上手くいってるんだと思う。
いまだに詳しくは聞けてないけど……。

だって片思い歴が長すぎて
なかなか受け入れられないっていうかね、
拒否反応がね。





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「はぁーぁ、１年かぁ…………」





休憩室でテーブルに項垂れるようにして目を閉じる。

長いようで、あっという間だった。

先輩がいなくなって
暫くは仕事も大変で、先輩の有難みをひしひしと感じてた。

それでも日常っていうのは残酷なのか好都合なのか
待ってくれるわけでもなく流れてく。



裕太への想いも
先輩がいなくなった寂しさも、
少しずつ薄れていっている。

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