泣き顔マニア ２

６９ ページ20

.


「なーんて。
また困るようなこと言ったな、俺」


「いや、そんな………、」





まぁ……うん、実際困ってしまった。

けどもっと困ってしまうのは
簡単に反応してしてまうこの心臓だよ。

キュンとしちゃうじゃん……
この夏の感じとか海の感じとか
シチュエーションが憎いっ。





「さ、海でも入るか」


「え？無理ですよ、水着もないのに」


「足だけでも入ろうぜ、あちーもん」


「じゃあ私は先輩に水をかける係、

「ばか、そんなんいらんわっ」





えー、わりと本気で水かけたかったのに
って思いながら先輩を追い越して水際に近づいて





「ばっしゃーーん」


「うおっ、冷てっ！」


「へへへ、気持ちーでしょ？」


「んのやろ、おりゃっ」


「ひゃっ、冷たーーい！」


「へっへっへ、仕返しだ」






いい歳した大人がはしゃぎまくって
昼前には着いてたはずなのに、気付けば昼が過ぎる時間になっていた。






「やばい、めちゃくちゃ濡れちゃいましたよ」


「大丈夫大丈夫、車にタオルついてるし」


「でも服まで先輩が濡らすからー！」


「じゃあちょっと早いけど家くる？」


「へ？」





服貸すし、って。

いやいやいや、ま、まだ早い……っ。
まだお昼だよ？心の準備が………





「や、やっぱり大丈夫ですよねっ！
ちょっともう少し海辺を歩きましょう！乾きます！！」


「………どんだけ家に来たくねんだよ」


「そんなわけでは………」





じとっ、て睨まれるけど
その視線からわざと逸らして、行きましょう！って歩き始めた。

今更もがいたところでどうしようもないし
最善な答えを出せる気なんてしないけど






「楽しいな〜。
海ってこんな楽しかったっけ」


「ですね、私も久しぶりの海すごく楽しいです」





久しぶりだから、ってだけじゃなくて
先輩といるとどこでも何しても楽しいんだよね。

でもこんなこと言って余計な期待を持たせたくなくて
言えないから、先輩の隣を少し早歩きで歩くだけ。

７０ 北山side→←６８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す