はちみつ色の日々

＊ ページ48

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「最悪………っ、」




とりあえずその場は凌いだものの
部屋に戻ってきてから、ソファに顔を埋めて静かに叫んだ。

今更また宏光と再会とか
有り得なすぎるし最悪だ。

何が悲しくて元カレとまた顔合わせなきゃなんないのよ………。





ていうか。

まだちょっとだけ未練があるだけに
尚更もう会いたくなんてなかった。







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＊＊＊＊＊＊


「お疲れ」


「ひっ、！！」





それから何日かして
会社帰りに声をかけられると、案の定宏光が後ろにいて




「そんな不審者扱いみたいな反応やめろよ」


「だ、だって急に声掛けてくるから」


「じゃあ、今から声かけるよ〜って言えば良かった？」


「そんなんじゃないけど……」





こういうめんどくさいやり取りも久しぶりで
変わってないんだな、って少し笑ってしまった。





「いつもこんくらいの時間なの？」




ナチュラルに隣を歩きながら、
っていうか同じマンションだもんね、そうなるか。




「うん、大体いつもこのくらいの時間かな〜。
宏光も？」


「俺はまだ来たばっかだからあれだけど
これから残業とか増えんのかも」


「そっか、異動だっけ？」


「そうそう、本社異動なったけど
やっぱ本社だけあってやり方とか全然違ぇからさ」


「凄いね。
あれからもずっと頑張ってんだね〜」





宏光と別れた五年前。

ちょうどお互いの仕事が忙しくて
時間も合わず、気持ちの余裕もなくて……





「Aは？なんとか頑張れてんの？」


「うん。
もう先輩より後輩の方が多いくらいになってきちゃったよ」


「はは、まじか」




別れてしまった。

若かった、って言えばそれまでなんだけど
その当時の私は、仕事と恋を両立できるほど器用じゃなくて
迷惑をかけたくなくて別れの道を選んだんだっけ……。





「なんか懐かしいな〜。
こうやって二人で歩くのも」


「……だね、」




背丈も声も、香りも優しい喋り方も
何一つ変わってないのに

隣を歩くこの距離感だけが変わってしまった今この時を
もどかしく思ってしまうのはきっと私だけだ。

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